この辺りのお話も印象に残りました。 P162 釈 ・・・少し前にこんな話を聞きました。ご自宅で仏教塾をされているある和尚さんのところへ、五〇代前半ぐらいの奥さんが相談に来た。「自分は嫁いでからずっと、病弱で入退院を繰り返す義理のお母さんを介護してきた」というので、「大変でしたねえ」というと、それは大変じゃないと。 久坂部 ほう。 釈 そのお義母さんはすごくいい人で、お世話をいやだと思ったことは一度もない。お母さんが食べこぼしたものを食べるのも平気、というほどの間柄だったそうです。ところが、このお義母さんが認知症になった。食事を持っていったら、「あんた誰?」といわれたというんです。奥さんはこれに…