医療社会学は、医療人類学における痛みや健康の文化社会的構築性についての議論に長らく大きな影響を受けていた状況であったが、昨今はポストモダン的な言説分析を医療言説の分析に導入することで医療現象の社会的文化的構築性を独自に論じようとしている。その筆頭はポストモダン保健社会学(postmodern social theory of health, PSTH)を構想するフォックス(1993)である。 彼は近代的な医療社会学に対し「医療言説の政治学」(politics of health talk)を対置する。彼にとって健康や病気とは、「器官なき身体」(body without organs, BwO)…