作家、地域雑誌編集者。 1954年、東京都文京区に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。
出版社で企画・編集の仕事にたずさわった後フリーとなり、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」(通称「谷根千」)を友人とともに発行。 同雑誌の編集を続けながら、地域研究、紀行、文学などに関する著作を発表する。 著書に『「即興詩人」のイタリア』(講談社、第12回JTB紀行文学大賞)、『鴎外の坂』(新潮文庫、平成9年度芸術選奨文部大臣新人賞)など。
amazon:森まゆみ
今日と不安ない と変換されていまいました。 名前は知ってるけど読んだことはない という作家はいっぱいいます。 その一人がこの「森まゆみ」という人です。 肩書は作家・エッセイストですけど、 さて、どういう方面の人かというと、 さっぱりわかりません。 だけど、京都にまつわる身辺雑記・対談本なので 読んでみました。 人気があってなかなか借りられませんでした。 京都不案内 自身の病気がきっかけで「樹木気功」というのを やるためにしばしば京都を訪れた著者が、 京都で出会った人、発見したなんやかやについて記しています。 学者、芸術家、文化人……交流範囲がとっても広くて、 正岡子規と夏目漱石が京都のどこでだ…
京都不案内 作者:森 まゆみ 世界思想社 Amazon 谷根千ネットの森まゆみさん、以前仏教大学の文化講座で四条のフランソア喫茶室がテーマになった時講師の一人として招かれておられ*1、京都とも関わりを持っておられるのだなと思ったのだが、京都の気功の先生に師事しておられ身体のために簡単な下宿住まいもされていたらしい。それがまた私の生活圏である左京区で、話題に出てくる話がどれも身近も身近。興味の方向性、ライフスタイルの好みも似ていて興奮しながら拝読。楽しすぎた。小さな京都の町、どこかでご本人ともつながりそうな勢い。 京都で出会った方々とのお話も紹介されているが、稲垣真美さんという1926年生まれの…
このところ新刊本屋へと行くことができていないことであります。 先日に来客を迎えるために駅までいった時に、すこし時間がありましたので、 本屋で時間つぶしをしたのですが、何冊かを手にしたものの、買うことができず でありました。 たぶん、図書館から借りている本が相当に重たくのしかかっているのですね。 読むことができる本は、図書館から借りて、なかなか読むことの出来ないものは 購入しようというのが、当方の流儀であったように思うのですが、現実は逆になっ ているのかもです。 先日の書店で手にして、これは買うかどうしようかと考えたのは、次のもので ありました。 暗い時代の人々 (朝日文庫) 作者:森 まゆみ …
今日は遅番だった。朝、森まゆみ『震災日録』を読む。この本は東日本大震災から1年にわたって記された著者の日記で、あの当時の日本の空気をパッケージングすることに成功した、実にシブい仕事だと唸る。私自身は実を言うと3.11が起きた時のことを何ひとつ覚えていない。当時はそれだけ酒に呑まれて精神状態がメチャクチャだったということなのだけれど、こうした仕事に触れると日本が見舞われたあの未曾有の危機について思いを馳せることができる。彼女の見解には異論を持つところもあったが、それでもいい本を読んだと思った。Amazonで欲しい本を見つける。こうした際、昔ならワンクリックで買っていたかもしれない。実を言うと私は…
明治神宮は財政難なのか? 明治神宮外苑の再開発の背景に同宮の収入だけで外苑を維持できないという問題があると報道されています。 明治神宮、実は「財政問題」…外苑再開発の背景に 稼ぎ頭の球場の建て替えがネック 多数の樹木が伐採の危機:東京新聞 TOKYO Web この報道を受けてTwitterなどでは「明治神宮は参拝者が多く、賽銭も多いはずだから維持できないはずがない」という声も見られますが、これは宗教法人には収益事業というものがあることを知らないことからくる誤解です。 収益事業って何? 境内で休憩所や売店を経営している神社があります。 その売店の利益または賃貸料にも税金はかからないのでしょうか?…
外苑再開発をめぐる議論 今回は森まゆみ氏の「神宮外苑は「創建の趣旨」に立ち返れ」(『世界』964号所収)に対する神道学の観点からの批評です。 森氏は作家で、再開発に反対の「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」の共同代表でもあり、それに関する著作も刊行しています。 森氏の論にはいくつかの事実誤認が確認できます。 外苑創建の趣旨とは何か? 当該論文には「これが外苑創建の趣旨だ」とはっきり書いてある部分はないのですが、次の2か所がそれに該当すると思います。 明治神宮に奉献する際の「将来の希望」には、「これからも明治神宮に関係ない建物の造営はしない。博覧会などの会場に使わない。清浄と美観を保つ」と…
生きるとか死ぬとか父親とか(新潮文庫) 作者:ジェーン・スー 新潮社 Amazon 最高にチョー面白いから、読んでみて〜。 そして何よりも 日本語の言葉の心踊るワクワク感 辛口スパイスが効いてるのに、 ひたすら、暖かくて、寂しい 親子のデートが 心を豊かにさせてくれるのよ。 で、すごいシンクロなのは、 なんと、むか〜し むか〜しの 私の、他のところで書いて放置してたブログを見つけて、 探し出して、メールをくれたカナダの方が 訪ねてきたのが、 森まゆみさんの 人間は夢を盛るうつわ って言うタイトルの本について書いた部分のことについてだった。 森まゆみさんは、千駄木界隈の人、 ジェーン・スーさんは…
漱石関連文献 林原耕三『漱石山房の人々』(講談社文芸文庫,2022.02)の復刊 漱石山房の人々 (講談社文芸文庫) 作者:林原 耕三 講談社 Amazon 森まゆみが永井荷風『鴎外先生』(中公文庫,2019)の「解説 鴎外と荷風」のなかで記している。 残念なことだが、亡くなってのちも読みつがれる作家はきわめて少ない。有名な賞の作家でも次の受賞者が出てくると古い方から消えていく。そういうことを繰り返し見ているうちに、あることに気づいた。それは亡くなった時に後輩が騒がなければいけないということだ。大正11年七月九日森鴎外が亡くなった時に、永井荷風は見事にその役を務めた。(308頁『鴎外先生』) …
コロナ禍の中だが、大船に足を運ぶ数は少しずつ増えてきた。となると、寄ってみたいのはポルベニールブックストア。入ったからには1冊は買って帰りたいと思っている。しかしながら、困ったことに自分と趣味が近いのである。予算がさほどあるわけでもない。それなりに迷ってしまう。大船まで来た以上は、一杯ひっかけて帰りたい気持ちもある。 予算を決めて本を買うというのもなんか楽しい。小学生の時に、不意に小遣いをもらって、狙ったものがないまま本を買いに行く気持ちと似ている。いろいろ迷いながら、予算内の本にターゲットをさだめ、徐々に絞っていく。で、今回買ったのが、森まゆみ「いで湯暮らし」である。520円+税。この後に、…
これは独立美術協会物故会員の洋画家熊谷登久平関係者向け用の報告メモでもあります。 オーラルヒストリーの裏付けになれば良いと、熊谷明子の個人の感想も含め、気が向いたら更新しています。 登久平と、生家の日野屋、義母と義兄、お弟子さん、甥の英三さんを中心とした千厩のメンバーが残してくれた資料、その断片、一関の平澤家の資料、それと古書や上野の山にある文化財研究所や国会図書館などで見つけたものを元に、見つけ次第年度に書き込んでいるため、年度内の順は適当になっており、スマホ画面で入れ替えるのは面倒なのでそのままです。 何月何日の展覧会かは検索したら出てくる場合もありますが、ごめんなさい。 私のパソコンは1…
・猪木武徳. 地霊を訪ねる—もうひとつの日本近代史. 筑摩書房, 2023, 384p. www.chikumashobo.co.jp 経済史の先生が書かれた、紀伊國屋じんぶん大賞にも選ばれた本。川瀬巴水のカバーも素敵。国内の鉱山を訪ね歩き産業と地域の関係性を考えつつ、その地の亡き人々の声に耳をすますというテーマも興味深い。だから手に取ったのだけれど、それぞれの土地についての記述が、えっ? これで終わり? というくらいにわずかであり、おじいさんが、わたしはここにもいったことあるよ、あそこにもいったことあるよ、と、これまでの人生で行ったことある場所についてサラサラと喋ってくれた、というだけの本だ…
『近代作家追悼文集成[25]寺田寅彦』(ゆまに書房平成四年)に収める鈴木三重吉「寺田さんの作篇」に、ある日夏目先生のところへ伺うと、先生は「今寺田が帰つたところだがね、僕がアインシュタインの原理といふのは大体どういふことかねと聞いたら、それは話したつて先生には分らないな。と言つたよ」と苦笑されたとあった。 あっけらかんとした人間関係であり、安倍能成が、漱石門下での寺田寅彦の扱いは「お客分格」で、夏目先生は若い者たちの美点と長所とを認められたけれども、寺田さんに対する尊敬は別であったと述べているのはこうしたところにも現れているようだ。 鈴木三重吉は寅彦の人間像について、われわれの周囲の、すべての…
【雑感】 そろそろグランブルーファンタジーリリンクを進めなきゃなので、このお休み中は読書をセーブしようと思います。 グランブルーファンタジーリリンクも一週間近く止めてるな。cv早見沙織の顔のいいロリ女を始末して「はぁ面白かった」と思ってそのままにしてるわ。早くcv桑島法子のラスボス?みたいな奴に会いに行かなきゃ……。ワイ、サンホラで出会って以来の桑島法子のファンなので……。 【労働】 今日も虚無すぎて死んだ。 【ニュース】 歴史をめぐる「像」の対立に終止符を 「帝国の慰安婦」の朴裕河さん [徴用工問題]:朝日新聞デジタル 未だにこの人が左派からブッ叩かれている理由がよく分からんし、普通に右派か…
町歩きをする時、あてもなくぶらぶらと歩くのも楽しいけれど、何かテーマをもって歩くのも面白い。江戸に関する本を読んでいて、たまたま目に留まったのが、江戸時代のアイドル「笠森お仙」。谷中の茶店の看板娘で、現代のアイドルに通じるような人気者になった実在の女性である。今回はこの「笠森お仙」をめぐる町歩き。 お仙は宝暦元(1751)年の生まれ。谷中の感応寺(いまの天王寺)の子院・福泉院の境内にあった笠森稲荷門前で水茶屋「鍵屋」を営む五兵衛の娘で、店先に立つようになると、その美少女ぶりが大変な評判となった。その人気に火をつけたのが浮世絵師の鈴木春信(1725?-70)である。木版多色摺りの新技法を用いた錦…
緑の多い街路の散策とスタバのコーヒーを満喫した後の、大気に涼やかさを感じる遅い午後のJR国立駅で「THE BIG ISSUE」を売っている60代のホームレスの男性に出会った。 そういえば、何時だったかNHKスペシャルで、自立あるいは自分の住いを持つために「THE GIG ISSUE」を売っている人たちと彼らを支援する人々を報じた番組を思い出した。拳を振り上げた怒りではなく、観る者をしみじみとさせる説得力のある番組だった。 男性に「幾らですか」と声をかけると「200円です」との返事があり、私は200円を支払い、帰路の電車内と自宅での夕食時にじっくりと眼を通した。 以下は駆け足の記事紹介と私の感想…
関東大震災から100年で出版されたのだろうけど、今あらためて読む価値はあるなあ。 「谷根千」の関東大震災特集号、運が良ければ神保町辺りで見つかることもあるだろうけど、 地域雑誌は古本屋にもあまり出回らないから、こうして書籍で読めるのは有り難いですよね。 それにしても森さん達いい仕事したなあ。関東大震災の体験者(ということは、東京で震災に遭って生き延びた人々ということですよね)から直接お聞きした震災当時の状況って今では聞くことは出来ないもの。 森さん達が聞き書きした当時も高齢者だったけれど、震災から百年経ったら鬼籍に入っている人達が大半ですものね。 この本、東京だけでなく被害の大きかった神奈川の…
須賀敦子全集 別巻 対談・鼎談 表紙 須賀敦子全集 別巻 河出書房新社 発行 2001年4月10日 初版発行 須賀敦子さんの対談・鼎談集です。 向井敏:丸谷才一さんは最初の三行で人を惹きつけなければならないと、よく言っているでしょう。 その絶品の一つ。小津次郎の『シェイクスピア伝説』の書評の書き出し 「伊勢松坂の小津家は二人の優れた文学研究者を世に送り込んだ。一人は現代の小津次郎で、・・・もう一人は江戸後期の小津弥四郎で、その専門は『古事記』と『源氏物語』である」 そして、ついでのようにこう書き添えるんです。 「念のために言ひ添へて置けば、弥四郎は後年、本居宣長と名を改めた」(笑)p29-30…
以下は、マラソン本のインデックスです。1件当たり、600字から800字くらいまででコンパクトに感想を書きたいと思います。箱根駅伝だと繰り上げスタートかもしれませんが、とにかく完走します!50冊名:和田洋一『灰色のユーモア』(2020.1.17) 51冊名:倉科岳志『クローチェ 1866-1952』(2020.2.1) 52冊名:森田朗『会議の政治学』(2020.2.9) 53冊名:高木仁三郎『市民の科学』(2020.3.7) 54冊名:木庭顕『誰のために法は生まれた』(2020.3.15) 55冊名:石原俊『硫黄島』(2020.3.28) 56冊名:好村冨士彦『ブロッホの生涯』(2020.4.…
「人生と時代とストーンズ チャーリー・ワッツ公認評伝」ポール・セクストン ★★「裸の大地 第1部 狩りと漂泊」角幡唯介 ★★1/2「カラスは言った」渡辺優 ★★「海賊たちは黄金を目指す 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘」キース・トムスン ★1/2「ボス、俺を使ってくれないか?」中溝康隆 ★1/2「黒い海 船は突然、深海へ消えた」伊澤理江 ★1/2「現代台湾クロニクル 2014-2023」近藤伸二 ★3/4「特捜部Q カルテ番号64」ユッシ・エーズラ・オールスン ★1/2「治験島」岡田秀文 ★1/2「戦争の文化 パールハーバー・ヒロシマ・9.11・イラク」ジョン・W.ダワー …
1 松井優史「真実の一球―怪物・江川卓はなぜ史上最高と呼ばれるのか」竹書房、2009年2 小谷野敦「蛍日和: 小谷野敦小説集」幻戯書房、2023年3 「本の雑誌2023年5月号」 特集:さらば友よ! 目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼号 2023年4 森まゆみ「路上のポルトレ 憶いだす人びと」羽鳥書店、2020年5 ブライアン・モーラン「ロンドン大学日本語学科―イギリス人と日本人と」情報センター出版局、1988年6 五味俊晶編「真鍋博 本の本」パイ・インターナショナル、2022年7 トマス・M・ディッシュ「SFの気恥ずかしさ」国書刊行会、2022年8 飛浩隆「SFにさよならをいう方法 ; 飛浩隆…
土偶美術館 作者:小川 忠博 平凡社 Amazon ・ことしの読書をふりかえります。 ・このあいだ朝起きたらなんか変だった。アタマのなかが 自分じゃない。なんだこれは、そうだ夢を見ている。 起きているのに夢を見ている。生まれて初めての経験。 ネットで検索するとそういうことも実際にあるとのこと。 * ・『流星ひとつ』沢木耕太郎(新潮文庫) ……全編会話というのがすごい。最近「深夜特急」を 読み返そうかという気分。 ・『文字介のはなし」立川談四楼(筑摩書房) ・『往復書簡 ひとりになること花をおくるよ』 植本一子、滝口悠生 ……吉祥寺 古書防波堤にて購入。 ・『熊撃ち』吉村昭(ちくま文庫) ・『土…
2023年は、太宰治 没後75年でした。 今年は1本も記事を投稿していませんでしたが、何か1本だけでも更新したいと考えているうちに、ついに年の瀬を迎えてしまいました。 そして、あれやこれやしていたら、投稿できるのがクリスマスになってしまったので、逆にこれはいい機会!とばかりに、今回は皆さんと一緒に短篇『メリイクリスマス』を「初出誌(しょしゅつし」で楽しめたらと思います。 ちなみに、「初出誌」とは、作家が初めて世に出す、活字になったものを言います。単行本の最初の版である「初版本(しょはんぼん」も人気ですが、単行本として出版される前に、先に雑誌に掲載されているケースも多く、この雑誌が「初出誌」です…