前回松本八郎の『日本古書通信』における赤塚書房「新文学叢書」への言及を取り上げたが、彼が赤塚書房と並んで、プロフィルが不明なのは竹村書房と竹村坦も同様だと書いていた。 松本ほどではないにしても、私も同じような思いを抱く。かつて「尾崎士郎と竹村書房」(『古本探究』Ⅱ所収)などを書き、竹村書房が赤塚書房と異なり、尾崎のベストセラー出世作というべき『人生劇場』を出版したことにふれている。またそこで小田嶽夫や平野謙の証言を引き、竹村書房は改造社営業部にいた竹村坦と大江勲が始めた出版社で、小さいながらも、当時の唯一の文芸出版の専門書肆だったことに言及しておいた。その後も、大江が坂口安吾と中学の同級生だっ…