晩唐の詩人。博覧強記で知られ、恋愛詩に新境地を開いた。
以下のような詩が代表的。(岩波書店 高橋和巳 注)
無題
昨夜星辰昨夜風
書楼西畔桂堂東
身無綵鳳雙飛翼
心有霊犀一点通
隔座送鈎春酒暖
分曹射覆蝋燈紅
嗟余聴鼓応官去
走馬蘭台類転蓬
(上の詩の概略)私はあるとき宴席で、素敵な女性に出会った。二人のみでかわされるコミュニケーションがあった。一本の糸のような。ああ、でも私は役人、転がり行く「転蓬」のように去っていかなければならない・・・(なお、転蓬は普通の蓬ではなく、ねこそぎ転がっていく別種の植物である。)
なお、彼の読書法は独特で、本をあちこちに置いて読むというものだったので、獺(かわうそ)が獲物をあちこちに置くのとよく似ていたということで、このような読書法を「獺祭(だっさい)」と呼ぶようになった。