国書刊行会から刊行中の、幻の傑作・奇作SFのみをあつめたBest & Weird Science Fictionコレクション。
ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』柳下毅一郎訳(第1回配本) イアン・ワトスン『エンベディング』山形浩生訳 シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』大久保譲訳 トマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』若島正編 R・A・ラファティ『宇宙舟歌』柳下毅一郎訳
ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』(日本オリジナル短篇集)浅倉久志・伊藤典夫・柳下毅一郎訳 アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』渡辺佐智江訳 アンソロジー<未来の文学>
クリストファー・プリースト『限りなき夏』(日本オリジナル短篇集) 古沢嘉通編訳 サミュエル・R・ディレイニー『ダールグレン』 大久保譲訳
最高のシリーズ「未来の文学」が完結した。 国書刊行会〈未来の文学〉シリーズ 国書刊行会の「未来の文学」シリーズがついに完結したらしい。「未来の文学」シリーズは大好きなシリーズだった。60年代、70年代の知られざる名作SFを、美しい装丁でたくさん刊行してくれた。どの作品もとても面白そうに見えたし、とにかく装丁がかっこいいので何冊も揃える楽しみもあった。私はSFの中でもニューウェーブ期のSFが特に好きなのだが、このシリーズがその好みに影響を与えているのは間違いない。また、このシリーズは単純にSFとは言い切れない雰囲気の作品が多く選ばれていた。SFと、SFではない文学との境界線上に位置するような作品…
ランキング参加中読書 国書刊行会《未来の文学》がついに完結。 フェアのやっているジュンク堂書店藤沢店に行って、冊子を入手した。 最初の冊子には第1回配本ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』 2004年夏刊行予定とある。(実際に刊行されたのは2004年7月20日) 『ケルベロス第五の首』といえばしゅのー先生(殊能将之)である。しゅのー先生ホームページのThe Reading Diary of Mercy Snowをまとめた『殊能将之読書日記2000-2009』を確認してみると、翻訳前にThe Fifth Head of Cerberusを詳細に紹介しているのが2000年6/24。さらに翻訳に近づ…
映画も観ていない、本も新刊1冊のみと散々な状態だが、やるか(割と美術展には行ったか)。 ◎新刊 『MOCT「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』青島顕 唯一の新刊が同級生の本というのも誤解を招きそうだが、ホントに面白いので多くの人に手に取って欲しいので。単純な二分法で決定されがちな現在の世界状況に対し、真摯に丁寧に思考する大切さを感じる本である。 ◎旧刊(2022年以前) まずはフィクション、SF・ファンタジー~幻想文学。 ・『時ありて』イアン・マクドナルド 時ありて作者:イアン マクドナルド早川書房Amazon・『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン ヴィーナス・プラスX (未来の文…
podcasters.spotify.com ポッドキャストを始めてはやいもんで約2年。 私のことを知っている人も知らない人も、これからもどうぞよろしく、ということで、自己紹介、あらためてやってみました。 今回お話に出てきた本はこちら。 5問目 復刊してほしい本 近藤直子『残雪 夜の語り手』 残雪研究の第一線でご活躍されていた近藤直子さんの書評集。 一人で読んでも分かりづらい(だがそこがいい)残雪ですが、この本を読むと残雪の作品の解像度が上がります。残雪が描こうとした「わからなさ」が少しだけわかる、かもしれない。 黄泥街の評論だけは、白水uブックスから出ている『黄泥街』にも収録されています。 …
ランキング参加中読書 『奇跡なす者たち』ジャック・ヴァンス ~異世界を鮮やかに描き出すマエストロの傑作選~ 異世界描写にかけてはSF界きってのマエストロ、ジャック・ヴァンスの傑作選である。 ヴァンスの最大の魅力はなんといってもあたかもその場に居合わせているかのような色鮮やかでエキゾチックでどこか不気味な異世界描写にある。 本書では「フィルスクの陶匠」「月の蛾」がそういった系列の作品で、またそうした異世界を舞台にした(時にオフビートな)活劇も自家薬籠中のものとしており「保護色」「奇跡なすものたち」「最後の城」によくその特質が現れている。 なかでも「月の蛾」は必読の名作。だれもが仮面をつけ複雑怪奇…
ランキング参加中読書 さて<シミルボン>に投稿した書評の再投稿ですが、今回からもう一つ連載形式にした「奇妙な味を求めて」の方に入ります。 第1回として異色作家短篇集の自分なりの楽しみ方を自己紹介のようなつもりで書いて、その後は異色作家短篇集好きにおすすめな短篇集を紹介しようということでやっていました。が、結局わずか8回のみで終了。プロあるいは同人で活動を続ける方々の持続力にあらためて敬服することになりました。という意味ではこれも良い経験だったともいえます。 では第1回の分です。これは元は2008年のブログ投稿内容でもありますが、旧ブログ投稿分でまた加筆修正もしてシミルボンに投稿したのでやはり入…
タイトルの通りです。 上映会の図(とめきち『すわっぷ⇔すわっぷ』より。) 先日、京大SF研さん主催?で同年代の大学SF研究会サークル複数がスペースで話しているのを聞きました。 実情としては、作品の数が多かったり、入手難易度が高かったりするために、古典に親しむのがむずかしいという話。いっぽう、アニメなど映像作品は共通言語になりやすいそうで、そういえば学生時代なにを上映したりしていたかな、と思い出すために書くことにしました。最近ちゃんと文章を書けなくなっていたので、リハビリ含め書きました。順不同。あ、ちなみにわたしは元ミステリ研究会の人です。 また、テーマは絞ったほうがいいかな、と思い、SFとミス…
国書刊行会、未来の文学シリーズ。ディレイニーの全中短編コレクション。 「われら異形の軍団は、地を這う線にまたがって進む」がめちゃくちゃ好きだった。 「おまえさん、なにか自分にとって非常に大事なものを失ったものがあるかね--あまりに大事すぎて、他人にはそれがどんなに大事だか、言う気にもなれないものを? それが失われていく。おまえさんはそれが失われるのを見まもる。そして、やがてはそれは完全になくなってしまう」 全世界において電気っぽいエネルギーの無限供給が実現し、さまざまな(現代における)社会問題が事実上の解決を見た世界において、主人公であるブラッキーさんはエネルギー供給網から離れて暮らすコミュニ…
お仕事の告知です。『SFマガジン』2023年10月号の特集「SFをつくる新しい力」に参加しております。SF小説の入門作品を薦めるミニレビューで、ぼくは2作品を担当しました。未読の方の道標となっていれば幸いですが、さて、道標となるようなレビューとは何か。 ぼくが最初にSFをSFと意識して手に取ったのはおそらく、ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』だったはずです。そのきっかけとなったのは中村融編『街角の書店』で、いまとなっては見知った名前の並ぶ豪華なアンソロジーだったその本は当時のぼくにとって未知への扉であり、ヴァンスもそうした扉のひとつでした。ヴァンス。クリスティーやクイーンとは違う、どこかエキ…
突然ですが…… 突然ですが創作SF小説を書いて投稿サイト「カクヨム」に投稿しました。少し前からSF小説を書いていたのですが、今回カクヨム公式企画である「カクヨム公式自主企画「百合小説」」に参加するべくユーザー登録したという次第です。 近未来のシンガポールを舞台としたポストコロニアル・熱帯クィアSFですので、ご興味ありましたらよろしくお願いします。 kakuyomu.jp 追記:2023年9月に発表された「第三回かぐやSFコンテスト」にも作品を応募し、選外佳作に選んでいただきました。 詳しくはこちらをご覧ください。 pikabia.hatenablog.com さて、小説投稿サイトのアカウントを…
1850年 曾祖父・八三郎生まれる。 1855年(安政2)内ノ子騒動 1866年(慶應2)奥福騒動 1894年(明治27)父・好太郎生まれる。祖母はフデ。 1902年(明治35)母・小石生まれる。 1914年(大正3)20歳の父と12歳の母が結婚。 1919年(大正8)祖父この頃死ぬ。数え五十歳。 1923年( 12) 姉・一生まれる。 1924年4月24日、好太郎、明智新六らと大瀬革進会を結成、総選挙で窪田文三を応援と決定する。(史料愛媛労働運動史4巻、124p、愛媛新報) 1929年(昭和4)長兄・昭太郎生まれる。? 次兄・清信生まれる。 1933年、姉・重子が生まれる。 5月15日、伊丹…
2022年の最終クールの日記です。美味しいところ{「オモシロ2時間ドラマは、"あるある"として笑われがちな断崖での事件解明にきちんと意味をもたせたり、"解決編"パートも犯人と現在時制で向き合う緊張感(犯人が口封じに探偵を殺す可能性)がちゃんとあったりするんだな」とか。ゲームプレイ日記とか}は通常更新サボリ期間中に抜粋をアップしたり、個別の感想記事として膨らませたりしちゃったんですが。 ほかのの大きめの文章としては、首が痛くてしゃーなかった記録、円城×大樹(前島)ゴジラトークイベント見た感想(さすがにこれは配信公開中にアップすべきだった……ちなみにイベ等で話題が出た「季節の風物詩的に怪獣が訪れる…
◆『輝く断片』シオドア・スタージョン 再読。 「取り替え子」 遺産相続のため、赤ん坊の世話をして家庭的なところを親戚に見せなくてはいけない夫婦。偶然現れた赤ん坊はで、というコメディ。切れの良い会話が楽しい一作。 「ミドリザルとの情事」 冒頭いきなり怪我人を助ける夫婦の描写から全く思いもかけない方向に転がっていく。先駆的なテーマを含め、スタージョンの特質がよく現れている。ティプトリージュニア「男たちの知らない女」も連想させる。 「旅する巌」 時によくわからない作品があるスタージョンだが、これもそうした部類。解説にあるように無理矢理SFにしたと考えると納得がいく。ただ、ヒット作後に書けなくなった作…