「経済学者たちの日米開戦」秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く 牧野邦昭著 新潮選書 2018年刊 本書で紹介される秋丸機関の「抗戦力調査」は、同時期になされた総合力研究所の報告(猪瀬の「昭和16年の夏」に詳しい)と類似の報告であり、特に目新しいものでもない。「幻の報告書」というタイトルは販売を目的にしたキャッチコピーであろうか。 本書で著者の言いたいことは、幻の秋丸機関の報告書についてというより、次の2点であろう。すなわち、①報告に記載された日米の国力の強大な差(20対1)が、”一般には知らされず政府・軍など限られた層だけで情報を秘匿し、彼らが独断的に戦争を開始した”という通説を否定し、軍や一般…