詩の一形式。短いフレーズで、韻を踏む形式は「韻文詩」(verse)と呼ばれるが、一見通常の文章のように見えるのが「散文詩」(prose)である。 ここで注意したいのは、韻を踏んでいても詩とは呼べない文章もあるし、散文で書かれたテクストが詩そのもの、という場合もあることである。「詩」に心があるのなら、それを持ったテクストは詩と呼べるだろう。 有名な散文詩の作品では、フランスのボードレールの「パリの憂鬱」がある。けだし、梶井基次郎の一連の小説は散文詩と呼んで差し支えない。
近況報告など 今後のこと 頒布予定のエッセイ集について 梅見をテーマとした詞花集について 近況報告など NHK学園のさくら短歌大会に投稿しました。 もともと公募に出すために短歌を詠んでいたというよりは、日々のことを思いのままに詠んでいた短歌が溜まってきていて、その中から題詠と自由詠をそれぞれ選んで投稿しました。 短歌は自分自身の短歌の拙さにめげて、やめてしまおうかとも思っていたのですが、それでも最近ふたたび詠むのが楽しくなってきたこともあり、また先日短歌読書会で薮内亮輔『海蛇と珊瑚』を読んだこともあってモチベーションが高かったのでした。 歌集 海蛇と珊瑚 作者:藪内 亮輔 KADOKAWA A…
『愛だとか幸せだとか』 愛だとか幸せだとか そんなことばかり語られる それは 愛が足りていないから? 幸せだと感じないから? それとも 愛に満ちているから? 幸せが溢(あふ)れているから? 足りない愛を求めて彷徨う 幸せを探して誰かが儚く 満ち足りた愛を抱いて歩む 幸せを溢(こぼ)しながら僕が 小さな愛に空気をいれて 小さな幸せにも空気を入れて 風船みたいにふくらませ 浮かべてみるとちょっと楽しい 愛だとか幸せだとか そんなことばかり語られる それは たくさんあっても困らないから それは たくさんあると楽しくなるから
www.youtube.com 午前0時も半ばを過ぎて ヨット・ハーバーの周りには 黒い潮風と引き揚げられた古ボートが眠っている 白くぼやりと浮かぶのは 疲れ切って萎えた帆 その白さに小指ほどの言葉を当てはめながら歩く ただ来てしまったから歩く なにひとつ意向を持たず歩く 陰が歩行者を支え 時折突き崩し 数え切れない羞恥にきつく胸を捩らせる あれはいったいだれだろうか 酒に酔ってふらついている男は 灯台の裏手にふかく沈んでいく 帰れないのだ 夜風が足につつかかる たったいま午前一時を過ぎ 港のまえには黒い車が停まっている 朝を待って眠る また酒を呑んでしまったのだ 海のもっとも黒い部位 あそこ…
Tweets by poesy_rain twitter.com ここのところブックライティングの仕事をしていたこともあり、Twitterでの活動をもう少し活発化させようかと思っていました。 しかし、震災もあり、まだまだ世の中が危うい状態で、自分自身の心身も落ち着かないので、Twitterアカウントは温存させつつ、告知メインでの運用にするつもりです。 今はアプリも入れておらず、Webブラウザからの閲覧・投稿をしていましたが、仕事がひと段落したのと、喪中の疲労もあり、まだ自分のモードをすばやく創作モードに切り替えられないので、ログアウトしました。 同人を主体にやっていきたいとは今のところ考えてい…
『静けさの中で』 時計の針は峠を超えて 1日を終わらせ 1日を始める 月は静かで あなたも静かで どこか頼りないこの世界 ふたりで一緒に隠した不安は そのまま沈めて忘れてしまおう 現実を生きる そんな強さはないけれど 今日から明日へ 乗り越えた分だけ 涙を流せばいいんだよ 雪が降りる音さえ聞こえる 静かで悲しい夜だから そっとあなたを抱きとめる 大丈夫 わたしの声に耳を澄ませて 雪の音なんていいから 愛されようとしなくていいから ただわたしの隣にいて 終わって始まる世界のどこかで だれかが喜び だれかが嘆く 静かに流れる時間の隣で 静かに散った 景色が散った ふたりで隠した不安と一緒に 夢も隠…
noteにて新作の散文詩を公開しました 主宰文芸サークルでの南木佳士『阿弥陀堂だより』読書会 次回の読書会の予定が2本決まりました noteにて新作の散文詩を公開しました noteにて新作の散文詩「罪業の門を叩いてのちに」を公開しました。 note.com 時雨を含めてかれこれTKの音楽は14年ほど聴いているのですが、今回の詩はTK from 凛として時雨の「first death」のライヴ版に衝撃を受けて、その衝動のままに書いた一編です。 音楽サブスクを抜けてしまったので、「first death」はiTunesで購入しました。 first death TK from 凛として時雨 ロック …
君の望んだ探し物一周回って腕の中君は自分を顧みず自由という名の殻の中 まあるい世界の空の上虚ろな波紋は透き通り星屑の中をかき分けて何処へなくとも散っていく 隔たりがあれば幸いで壁の向こうに耳はなくしゃっしょこばった顔の儘蔓草に巻かれ措いていく ねえ 本当に それはねえ 宝石の様に光るそれは 虚ろな君と陰鬱な僕と星影の作る大小は伸びて縮んで笑いあい飽くまで踊った白い丘 夜明けを告げる鐘の音と共に青鈍色のアゲハが飛んだ沢山沢山沢山飛んだ 音もなくてふの羽が空を覆っている夜の空を朝の空に変えていく 君のぽかんとした顔の瞳を覗く真っ暗で透き通り僕は怖くなる
Blue あなたとわたしの本 253 けっきょくさ、 あなたの人生で何が起ころうともさ、 ポジティブにとらえて 喜んでいればいいということです。 いいことが起これば そりゃ喜べるだろうけど、 不愉快なことや嫌なことが起こってるのに ポジティブにとらえて喜ぶなんて 普通はできないでしょ、って あなたは言うかもしれない。 そうだね。 でもさ、 あなたとわたしだからさ、 もう「普通」は やめてもいいんじゃないかなぁ。 もう「普通」はやめようよ。 不愉快なことが起こって 不愉快だと感じて 不愉快な反応しても もっと不愉快なことが 押し寄せてくんだよなぁ。 当てつけみたいに。 だから 喜びのほうへ 意識…
産みの苦しみ 闇から光へ 辛い現実は思い出になり 光が暗い日々を包み込むよ 頑張って生きてきたんだね 困難を乗り越えてきたんだね 鐘の音が鳴り響いて 涙の毎日は終わりを告げるよ 大丈夫、あなたも私も 本当に愛されているのだから "Dark to Light" 新しい時代の幕開けだ 苦しみも、怒りも、喜びも、期待も すべてを使って進んで行こう 命を燃やしながら 『 』 を目指して
「今日はおしゃれだね」 「キレイなスカートだね」 褒めてくれてありがとう 今日はとっても気分がいいの 新しいスカート履いて気分がいいの 褒めてもらって一段と気分がいいわ だけど本当は 新しくない飾り気のない服の日も褒めて欲しいの 新しいスカートの魔法が無くても そうしてくれたら気分が晴れやかになるの 毎朝頑張って着替えているのよ、私 ランキング参加中【公式】2022年開設ブログ
Émile Verhaeren『Le Travailleur étrange』(Ombres 2013年) この本は、8年前ぐらいにジベール・ジョゼフでたまたま目にした「PETITE BIBLIOTHÈQUE OMBRES(影叢書)」の一冊で、この叢書には、以前読んだPaul Févalの『Le Chevalier Ténèbre(暗黒騎士)』も入っていて、ラインアップが私の好みに合っていたので、買ったものです。13の短篇に、Frans Masereelという人の木版の挿画が54も収められています。 ヴェルハーレンについては、むかし高村光太郎訳の『天上の炎』というのが文庫本で出ていたのを覚えて…
血圧値 127/88/68 酸素飽和度 98% 体温 36.0℃ 体重 69.7キロ 僕は「にこたろう読書室」というものの室長ですからして、たまには本当に本を読んだり、読んだ本の話をここに書かなければいけないのです。 が、このブログを書き続けている2年間を顧みても、やれ今日はクスクスを食べたとか、どら焼きの皮の是非とか、ワインは1杯目は数えないでおくとか、酒と薔薇の日々(今、鮭とバラ、と先読み誤変換した)を終活の第一目標とすることに、一点の躊躇もあってはならない、とか。 なんかちょっと当初の目的とは違う方向にコンテンツが流れているような気がします。 それはブログの右側のカテゴリー欄の、テーマ別…
高柳誠。はじめに思潮社の〈詩・生成〉のシリーズで読んだ『高柳誠詩集』の、アナイス・ニン「技芸の冬(『人口の冬』)」の引用が強く記憶に焼きついている。愛すべきたたずまいのこの小さな本は、市庁舎、運河、天文台、競技場など名もないある都市の細部について、すべて見開き2ページで点描していく散文詩集。三つほど、書き出しだけ紹介したい。 動物園に集められている動物は、稀には絶滅寸前の種もいるが、ほとんどがすでに絶滅した種である。従ってその悉くが剝製や標本である。「動物園」書物は図書館の中にしか存在しない。と言うより、書物それ自体の原理からいって、図書館外では存在のしようもないのだ。書物を読むには、よほど慎…
2023年11月、光文社から刊行された李箱の作品集。翻訳は斎藤真理子。光文社古典新訳文庫K-Aイ2-1。 目次 訳者まえがき [詩]鳥瞰図 詩第一号 [小説]翼 [日本語詩]線に関する覚書1 [詩]鳥瞰図 第十五号 [小説]蜘蛛、豚に会う [紀行文]山村余情――成川紀行中の何節か [小説]逢別記 [童話]牛とトッケビ [随筆]東京 [小説]失花 [書簡]陰暦一九三六年大晦日の金起林への手紙 [散文詩]失楽園 [詩]鳥瞰図 詩第四号 解説 斎藤真理子年譜訳者あとがき NDLで検索Amazonで検索日本の古本屋で検索ヤフオクで検索
伊藤海彦『季節の濃淡』(国文社 1982年) 伊藤海彦『渚の消息』(湯川書房 1988年) 久しぶりに伊藤海彦を読んでみました。このブログを始める前、2006年頃に、『きれぎれの空』と編著『詩人の肖像』を読んでいますが、自然の風物を織り込んだ詩人らしい抒情的な文章に魅せられたことを覚えています。今回、その期待はまったく裏切られませんでした。 『季節の濃淡』がエッセイ、『渚の消息』は散文詩のかたちを取っていますが、ともに同じテーマにもとづく作品。というか、『渚の消息』には、『季節の濃淡』のいくつかの章を散文詩に置き換えただけと思われるものもありました。『渚の消息』は散文詩だけに短く、内容もおおま…
プチ多忙でしたが、アップするのもどうでもいいようなものでした、億劫で放置。 本日で鈴村稔さんのウクライナ支援展(ウクライナ大使館後援)も終わります。盛況であったか?後で様子を確認してみましょう。まずFacebook6日にアップしたものだけ記しましょう。 先日は、鈴村稔さんのウクライナ支援の個展を挨拶がてら鑑賞。 共同開催となったウクライナ人女性の作品もあり、カメラマン、陶芸、俳句が趣味の東大教授建築家となんとも多才多芸な人だった。 ただ、俳句朗読を誰かがやったのだが、やはり外人俳句で日本の俳句とは異種のものだ。 どこかの句会に出入りしているようで、連れの老婆が沢山きていたが、聴いていると、俳句…
夢と現実なんて、変な題を付けちまった。 実は、昨日、よんばばさんに紹介された村山早紀「さやかに星はきらめき」を読了し、一方で、昨早朝NHKスペシャル「戦場のジーニャ」を見たから、一応こんな題をつけてブログを書き始めた。きっと、まとまりのない話になろう。 「さやかに星はきらめき」の詳しい紹介は、よんばばさんのブログをご覧ください。 よんばば (id:yonnbaba) 10日前 温かさとひりひりする寂寥と『さやかに星はきらめき』村山早紀著 - あとは野となれ山となれ 地球が、天災と疫病と戦争で住めなくなり、地球人類が月を中心に、犬・猫から進化した犬人・猫人と宇宙に住んでいるという設定の話である。…
みなさま、こんにちは。お久しぶりです。 いよいよ明日開催となりました、文学フリマ広島6📚 今回、私は久しぶりの新刊2冊を合わせた計6冊のラインナップで参加いたします。 初出店した時から、ひびこれに足を運んでくださるみなさまにとって選べる楽しさのあるブースというのを一つの夢にしていたので、私自身、まだ開催前ですが喜びひとしお、嬉しい気持ちでいっぱいです☺️ それでは、明日のお品書きです! 詩集『みずいろ』 自身二作目の詩集になります、新刊です! 一作目の詩集『秘境』が文学フリマ広島1の2019年だったので、5年ぶりの刊行になります。 ここ数年はブースに来てくださったみなさまから「次の詩集を出され…
エンシュアを貰って来ました。エネルギー不足っぽいので。 サビだけ出来てる歌詞が有って、これをどうしようか考えています。 こんな感じ(以下) サビ1 会いたいと想うより 速く 廻る 炎の翼で イカロスよりも愚かに 昇れ 昇ってゆけ サビ2 涙が 頬を切ろうと 君の眠る陸(くが)まで 七つの海に得た 黄金(こがね)は 月の影 ファンタジーな感じにしたい‥、冒険風な感じに。 アイリッシュにしたいので楽器編成は笛とフィドルが良いかなぁ。 私には今や編曲さんがついているので、最低限のメロディーを決めれば音は全部やってくれるのですが、最低限のものが思いつかない‥。 一応、2つくらい候補を作ってあるんだけど…
『鏡の中は日曜日』 鏡の中は日曜日 (講談社文庫) 作者:殊能将之 講談社 Amazon 初・殊能将之 『ハサミ男』より先にこっちを読んでしまった わたしはミステリ読みではないので、この作家の名前を初めて見たのはギャディス『JR』が邦訳されたときの売り文句──ミステリ作家・殊能将之も熱讃した、世界文学史上の超弩級最高傑作×爆笑必至の金融ブラックコメディがついに奇跡的邦訳!!──であり、なんか海外文学もめっちゃ読んでるゴツい国内ミステリ作家がいるらしい、としか認知していなかった。メフィスト賞作家だというのは後で知った。 ※ 注意! すべてのネタバレをします ※ 2024/2/14〜22(計8日間…
だれか、来る 作者:ヨン・フォッセ 白水社 Amazon 『だれか、来る』 ヨン・フォッセ著 河合純枝訳を読む。 「2023年ノーベル文学賞を受賞した、ノルウェーを代表する劇作家の」「初の日本語訳本」。『だれか、来る』は戯曲。戯曲、なんか読みにくい。いやいや、そんなことはなかった。 「五十代の彼」と「三十代の彼女」は、オーシャンビューならぬフィヨルドビューの古い家を買う。交通の便も悪いが、その分、邪魔されずに二人っきりでいられる。 「二人きりになりたい」でも、だれか、来るかも。 彼女は家を買ったことに満足しているが、彼の方はやや後悔しているところもある。第一場ではだれも来ない。さては、ベケット…
2005年11月、土曜美術社出版販売から刊行された西岡光秋(1934~2016)のエッセイ集。装画は河原宏治、装幀は直井和夫。著者は大阪市生まれ。刊行時の住所は練馬区東大泉。 長年、詩に関わりのある文章を書きつづけていると、詩に関する様々な問題に直面する。そのつど、私自身の詩を中心とする思考過程を解明することに腐心してきた。無論、一作ごとの詩論・エッセーの投げかけてきた課題は、私の精神の内面に広い意味における詩の文様の浮上をもたらした。その文様を解きほぐす作業は孤独な時間との勝負であったが、この時間の共有と遊んだ幾年かは、いま振り返ってもきわめて辛く、そしてまた愉しみでもあった。 本書を編む前…
中島らもの作品。睡眠薬とアルコールを飲んだ写植屋が、知らぬ間に散文詩のような文章を打ち、高校で同窓生だった詐欺師が文章をネタにして一儲けしようとする物語。間違いではないあらすじだが、物語が動くのは2/3を過ぎたあたりで、それまでは別筋のストーリーが進む。 伏線らしきものもあるにはあるが、後半になって唐突に進んだ感は『ガダラの豚』よりもある。連載小説だったから最初にオチは考えていなかったのかな。男女の絡みも無理矢理ねじ込んだきらいがあって、ちょい微妙だった。これなら『すべてのバーで』のほうが読後感はよかった。
春の匂いが、頭の中を灼き尽くす。 2月14日(水)、 夜、ヘッドホンで古い音楽を聴きながら、花片だらけの闇の中で、僕は書く。 僕の頭の中には考えが不足していて、人生は分裂した森のようだ。いくつもの影が重なっている。魚も泳いでいる。綿雪が降ってくる。小さな、手のひらに乗るような稲妻が起きる。 ドレーキップの窓。直列4気筒エンジン。ひとり遊び用のカードゲーム専門店。電線、どこまでも続く電線、永遠に続く日本語が命に触れるまで。月の光が眼に宿った種類の人たちが、頭の中の砂利道をどこまでも歩いていく。 未明、もう少しで楽しくなれそうなのに、小さな病気を抱えているみたいな不快感が完全には消えてくれない。も…