-----講義録始め------ そこで、そもそも使用者が懲戒処分を行うことができるかどうかという法的論点を確認しておきましょう。 契約を締結した当事者が、通常、相手方に対して懲戒処分などの処分をすることは考えられないところです。ですが、労働関係においては、使用者側に懲戒処分が法的に認められてきました。これをどのように説明するかが、かつて学説では争いがありました。 かつての主流派は、固有権構成と呼ばれる考え方に立っていました。固有権構成とは、企業の秩序維持の観点から、固有に懲戒権が正当化されるというものです。この説に立つと、就業規則の規定がなくとも懲戒処分の権限が使用者側にあるという立場になり…