谷崎潤一郎の作。初出:昭和24年12月〜25年3月「毎日新聞」 「ここに述べられている物語は、概ね遠い昔に実際にあった事柄か、或はそれらを適当に配列し直したもの」と作者がいうように、この作品は平安朝の物語類や歌集類を用いながら、史実と創作をないまぜにして繰り広げる一幅の王朝絵巻である。 谷崎文学において<母恋い>のモチーフは重要な意味を持つが、とくにこの作品では華麗な物語世界に展開していく。谷崎文学の最高の結晶といって過言ではない。 参照「読書への招待」旺文社
少将滋幹の母 (新潮文庫)
少将滋幹の母 (中公文庫)
うつつにて誰ちぎりけむ定めなき夢路にまよふ我は我かは 若妻を奪われた老翁と、母を奪われた子の話。古典からの引用と、谷崎の創作とが巧に織り交ぜられ、ひとりの美くしき女性を巡る艶めかしい物語に仕上っている。谷崎の深い学識に感嘆させられる。 ランキング参加中読書
動画配信サービスJAIHOによる企画でピーター・グリーナウェイ(Peter Greenaway 1942-)の過去作品4本が各地のミニシアターで公開されています(配給はツイン)。 ZOO(A Zed & Two Noughts 1985)を観てみました。かなり昔に鑑賞して以来、劇場で観るのはおそらく2回目です。 greenaway-retrospective.com 以前公開されたときは周到にボカシが入っていましたが今回は無修正です。また、この映画には多数の「腐敗シーン」が登場します。従来の上映では過激さを薄めるためかその部分だけモノクロになるような画像加工がなされていたと思います。今回のレト…
日本人で名字の上に「大」の冠が付く人といえば二人しかいないだろう。大西郷と大谷崎だ。大西郷といえば幕末維新に広く知られたことで、大隈重信もそれを書いている。大谷崎と言い出したのは三島由紀夫じゃないかと思うがどうだろう。まだ10代の頃は最も苦手にしていた谷崎。何しろ改行が少なく字が小さい。さらに内容が難しそうで、さしあたり読んだのが『知人の愛』、今となっては『細雪』『猫と庄造と二人のをんな』『瘋癲老人日記』『鍵』『蓼喰ふ虫』など読んだが、さすがに『少将滋幹の母』は平安王朝風絵巻のようで難しい。併し、読むに従い本書がかなりの名作というのが解かってくる。谷崎本人もこれにはかなり自信を深めていたようで…
神戸市東灘区住吉東町1丁目にある谷崎潤一郎の旧居・倚松庵(いしょうあん)を訪れた。 倚松庵 倚松庵は、昭和4年に建てられた和風建築で、谷崎が昭和11年11月から昭和18年11月までの7年間にわたり住んだ家である。 元々は現在地から約150メートル南に建っていたが、六甲ライナー建設に伴い、平成2年に現在地に移された。 旧谷崎邸の表札 谷崎は、東京日本橋の生まれで、37歳まで関東で生活していた。 大正12年9月1日に、谷崎は滞在先の箱根で関東大震災に遭った。地震嫌いだった谷崎は、一家を挙げて関西に移住した。 引っ越し魔と言われた谷崎は、関西に来てから21回転居しているが、この倚松庵は、関西に来てか…