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大陸移動

(サイエンス)
たいりくいどう

continental drift(英)


大陸が太古から現在の場所にあったのではなく、時間とともに移動するという考え方。プレートテクトニクス等の移動メカニズムの話や、あるいはもっと単純に海洋底拡大を含めた地殻変化全体の考え方を指す場合もある。
狭義には1912年にドイツの気象学者、アルフレート・ヴェーゲナー(ウェゲナー)が提唱したことに始まる。

概略

ウェゲナーが着想を得たのは、世界地図を見ていてアフリカ大陸西岸(特にギニア湾周辺)の凹みと南アメリカ大陸東岸の凸部の形がよく似ていることだったとされる。もちろんこれだけではリンゴが木から落ちるのと同じでさしたる意味はないのだが、彼はその考えを進めて様々な証拠を集めていった。
そして例えば動植物の分布範囲が、間に海があるのに連続しているかのように見える現象であるとか、古生代の大陸氷河(氷床)の分布がとびとびである*1とかいった現象は、実は当時の大陸が集まった一つの巨大な大陸が存在したことを示していると考えた*2
これらは一定以上の説得力を有していた*3が、それでも陸地が動くメカニズムの説明は十分なものが用意できなかったため、主流とはならなかった*4
しかし、1950年代の古地磁気学の発展がすべてを変えた。どう考えても大陸の不動を前提としては成り立たない観測結果が、事態の再考を迫ることとなった。

ウェゲナーが説明できなかった大陸移動の動力源としては、マントル対流の考え方をホームズ*5が提出していた*6
その後、1962年にヘス*7が海洋底拡大説を提唱した。
技術進歩によって海底の岩石の調査も可能となり、その分析結果は、海嶺から両側へと海底が広がっていると考えねば説明が付かないものだった。これにマントル対流をくっつけてやれば、

  1. 地球のコアに熱せられたマントルが上昇する
  2. 海嶺をマントルが両側に押し広がる
  3. 海底が広がり、ついでに上に載ってる大陸も移動
  4. そのうちに冷えたマントルは沈み込んでいく。支えを失った海洋底も一緒に海溝となって沈み込んでいく

という一連のセットができあがる。これもまだ完成系ではないが、さらにウィルソン*8がトランスフォーム断層という考えを提出し、やがて地球の表面が「プレート」と呼ばれる単位でそれぞれ動いている、「プレートテクトニクス」と呼ばれる考え方が主流となった。
といってもプレートが永久不変であるなどと考えるのは「大陸が動くはずがない」と同程度の思い違いであり、プレートテクトニクス説も万全ではない。
その後、観測技術が進むにつれてより詳細なマントル内部の構造が明らかになり、地球内部の熱を受けたマントルが急速に上昇するホットプルームや逆に冷却して急速に下降していくコールドプルームの存在が知られるようになった。現時点でそれらを取り扱う理論は「プルームテクトニクス」と呼ばれている。
もちろんこれも万全ではない。マントルの更に内側、コアがどのような機構になっているかはほとんど未解明と言ってよい。マントルがどんなものか、直接確認されたこともない。現在の観測技術では捕まえきれない内部構造が潜んでいる可能性もある*9


大陸移動のメカニズムを解明するというのは、究極的には誕生直後の火の玉地球から、次第に冷えていくプロセスを解明しようという試みであり、熱機関としての地球を知ろうという努力であるとも言える。外部との熱収支を求めるだけでなく、さらにコアに含まれる放射性物質が発する熱であるとか、潮汐力や地球の自転を含めた様々な力の影響であるとかが関係してくる。
したがって年代を遠過去に遡った場合は現在と違ったメカニズムが動作していた可能性も考えられるし*10、逆に現在の大陸移動が永久に続くというたぐいのものでもない*11。といっても、実際に50億年ほどかけて実験で確認するとか、地球を二つに割って内部を見てみるといったことができない以上、できる限りの手段で観測して分析し、より確からしい理論を構築し続けるだけの話である。

*1:南米の南部とアフリカの南部とオーストラリアと、それからよりにもよってインドに氷床の痕跡があった。それら全部の地域を覆う氷床を地図に描くのは、確かにちょっと無理がある

*2:これをパンゲア大陸と名付けた

*3:動植物の分布を説明する対抗説としては、かつてはそれらの地域をつなぐ陸橋というべき陸地があったが、それは海中に没して現在では残っていない、というものだが、それで氷床の分布を説明するのはちょっと無理がある

*4:もっとも、「大陸が動かないメカニズム」を説明する確固とした理論が存在していたわけでもないから、冷静に考えるとこの表現はちょっとおかしいかもしれない

*5:Arthur Holmes、1890年〜1965年。イギリスの地質学者。他にも放射性元素の半減期を使って岩石の年齢を測ってみたり、地球の年齢を計算したりした凄い人

*6:これはこれで画期的すぎたので、やはり人々の容れるところとはならなかったが

*7:Harry H. Hess、1906年〜1969年。アメリカの地質学者で大戦時の海軍軍人。ギョー(平頂海山)の発見者。後にプリンストンで教授になってる。http://etcweb.princeton.edu/CampusWWW/Companion/hess_harry.html参照。

*8:John Tuzo Wilson、1908年〜1993年。カナダの地質学者というか地球物理学者。言うなればプレート説の神様

*9:地球深部探査船「ちきゅう」が建造された目的の一部ではある

*10:プルームテクトニクスによれば、ホットプルームの上に大陸があると「熱が籠もって」通常よりも過激な運動が始まる可能性が指摘されている。要は常に連続的な現象が起きるというものではない

*11:現実問題として、地球と成分がさして変わらぬはずの月は、サイズが小さいためにすでに冷え切っており、大陸移動も火山活動もすでに行われていない

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