影響? 受けたに決ってる。どんな影響? 憶えてなんぞいるもんか。 はっきりと記憶され、その後おりに触れて思い返される深刻な影響というものがある。「出逢い」なんぞと表現される場合も多い。 それとは異なる影響もある。そうだったのかなるほどね、といった読後感を得ていちおうの納得をしたまま、記憶の彼方に押しやられていったようでいて、無意識のうちに自分の思索や判断の参考となっていたりする。自説なんぞというものは、つまりは先達の片言隻句のモザイクだ。核心部分にごく微小な「資質」「持前」というようなもんがあって、そのタネに巨大量のコロモをまとわせたもんが自分である。 軍国期から戦争期・敗戦後飢餓期を主たる視…