小説家。1927年(昭和2年)5月1日-2006年7月31日 東京生まれ。作家の津村節子は妻。 学習院大学国文科中退。長く作家修行をしたが四回芥川賞候補となるも受賞に至らず、『星への旅』で太宰治賞、『戦艦武蔵』で事実上の作家デビューを果たし、『関東大震災』等で菊池寛賞、『破獄』で読売文学賞、『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、『天狗争乱』で大佛次郎賞を受賞している。大量の史料や証人に取材した、緻密な文体の記録小説・歴史小説に定評がある。芸術院会員。
ある日、講義が終わり遅刻子女と一緒に帰ることになった。偶然、担当講師も一緒に なり同じ電車に乗り合わせるという事態になった。毎晩夜遅くまで遊び惚けていた 僕は眠くて講義など朦朧としていたものだが、ある時、講師の好きな作家が吉村昭で あること、また、その作品について熱く語りだすということがあって、「おお、同志 やないか!」といきなり、昨日まで「うぜぇよこのおっさん.....」と思っていたのが、 「文学仲間じゃーん」という節操の無さ。うーん・・・これが若さだ。 向こうも、めんどくさい若造が、なぜか自分の敬愛する吉村昭作品を自分より読んで いること、作品について質問してもよどみなく答え、「あの場面の…
20代が始まったころ、僕は公務員になった。そんな年齢では、まだ世の中のことが 何もわかっていない。しかし根拠の無い自信だけはあるという、とんでもない若造 だった。 まず最初に県庁に行き、そこから配属が決まった庁舎へと割り振られる。 何も知らない僕は、「県庁で仕事すんのかな」と勘違いしたが、当然そんなわけは なく、案内役の職員から名前が呼ばれ、いきなり私鉄電車に乗せられ出発していった。 どこまで行くんだろう?と思った。その時分になっても、自分がどこで何の仕事をする のか、皆目見当がついていなかったのだ。そんな若造が県の税務課に着任するわけだか ら、そこの市民も災難である。僕の他にもう一人いて2人…
こんにちは。 前回の投稿ではツキノワグマによる被害の増加について触れましたが、その後の報道によると、被害がもっとも多いとされている秋田県では、これを食い止めるためにクマの駆除を行っているのですが、これに対して「可愛そうだ」「殺すな」など抗議の電話が多く寄せられているそうです。こうした苦情を言ってくる人の多くは、自分自身が直接クマによる被害を受けない場所や立場で発言しているため、地元の方々や秋田県知事は当惑と苛立ちをにじませて、これに反論していますが、これは当然の反応でしょうね。 前回も書きましたように、クマによる被害の原因を探っていくと、人間側の社会生活等にも大きな問題があることは事実で、クマ…
『道の駅オホーツク紋別』を出発するも、依然雨は降り続いており、止んでもまたすぐ降り始める。これの繰り返しが続いた。本来なら、紋別市に向かわずサロマ湖の手前で内陸部に向けて方向を変え、大雪山を目指すというのが当初の予定だった。大雪山近くには、教えてもらった『層雲峡』や『三国峠』もある。予定通りに進みたい気持ちは大きいのだが、降り続く雨と今後更に悪化するとの予報を無視するわけにはいかない。大雪山周辺は、釧路を周った後、足寄経由で行くことにし、今回はそのまま南に進み網走市を目指すことにした。 走り続けていると大小様々な大きさの沼、池、湖が見えてくる。その中でもサロマ湖は大きく対岸が見えないため海と見…
吉村昭『破船』読了。 購入したのは新潮文庫2022年5月(改版)35刷。 この時点で既にうっすらネタバレ臭が……と言いつつ載せてしまう(笑)。 ひと月ほど前、どこかで絶賛レビューを読み、興味を持ったので購入。 しかし……そのレビューを最後まで読まなければよかったと後悔。 何が何だかよくわからない状態の方が終盤の衝撃が大きかったのでは……と。 つまり、当該レビューはガッツリとネタバレしてくれていたのです(怖)。 もっとも、上掲の写真のとおり、 購入時点で帯の煽り文句を読んだら、ネタバレレビューに接しなかった人でも オチには見当がつくはずで……(あ、ゴメン💧)。 破船 (新潮文庫) 作者:昭, 吉…
こんばんは。 マダムあずきです。 今日8月15日は終戦記念日です。 少し前に読み終えたこちら 殉国 陸軍二等兵比嘉真一 吉村昭 沖縄戦の話です。 ワタクシは二十代前半のころ 亡き実母と二人で沖縄に旅行へ行きました。 ツアーだったのですが、ひめゆりの塔の見学もあり。 そのときに語り部の方からお聞きした内容とほぼ同じことが 作中で綴られていました。 www.himeyuri.or.jp あのときに資料館でみたものが この本を読んでいて思い出されてきて胸が痛くなりました。 戦争は二度と起こしてはいけない、 だけど子どもたちの時代にはどうなっているのだろう、 そんなことを思う一日でした。 (funct…
★★★★☆ あらすじ 妻殺しで服役した男は出所後、片田舎で小さな床屋を開く。 www.youtube.com カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。キネマ旬報ベスト・ワン作品。 感想 主人公が浮気した妻を殺して自首し、8年間服役して出所するまでの、普通ならそれだけで一本の映画が撮れてしまいそうな出来事を、タイトルバックの僅かな時間で描いてしまう監督の手腕が見事だ。しかもその間に血まみれで自首するインパクトのあるのシーンで、しっかりと笑いも取っている。 人生を一変させる事件を起こしてしまった後の主人公の姿が描かれていく。妻を殺してしまったことが頭を離れず、一匹のうなぎだけを友として、床屋をしなが…
西暦1783年1月(天明2年12月)、伊勢白子(現在の三重県鈴鹿市)の船頭、大黒屋光太夫は、紀州藩の囲米を江戸へ運ぶべく十六名の乗組員とともに神昌丸で白子の浦から出航したが、駿河沖で暴風に遭い航路を外れ、舵を折られたため操船できないまま約八ヵ月間の漂流の後、アリューシャン(アレウト)列島の一つアムチトカ島へ漂着した。 ここで四年の年月を過ごした後、カムチャツカへと海を渡り、さらにそこからオホーツク、ヤクーツク、イルクーツクへと移され、その地で知り合った博物学者キリル・ラクスマンの助言と助力により、女帝エカチェリーナ二世に帰国を嘆願すべく冬のタイガを横断してモスクワ、ペテルブルクへ至り、謁見が叶…
それまで知らなかった歴史上の人物の話を読んで 「こんな人がいたんだ」 と驚くことがあります その驚きは恋が始まるときと似ています 遠い記憶だけれど… 歴史小説の中の人物にの惚れこんでしまうと 歴史小説がフィクションだということを 忘れてしまいます フィクションだとわかっていても その人物像が本物のその人として心の中に残り続ける 本としての印象よりも 「人」の印象が残る歴史小説 アマゾンで桁違いの星がついているのを見ると 今更私が紹介するまでも無いとも思うのですが あえて紹介させてください 中高生という若い時期にこそ 読んでほしい「大人の仕事」が書かれています 「壬生義士伝」浅田次郎著 新選組藩…
しょうちゃんの読書日記パート42は約1年振りで、前回に引き続き吉村昭の作品です。花火は後期の15編の短篇集で、文庫本などに収録されていて以前に呼んだことがある作品も幾つか含まれていました。初期のように人の死を題材にした小説ばかりではありませんが、それでも人の生死について、死をめぐる人間関係について考えさせられる作品が多かったですし、長編の歴史小説とは少し違った切り口のように感じられました。作者は学生時代に結核で療養しており、終戦後間もない時期に肋骨を切除する大手術を受けているそうですが、ストレプトマイシンも既に出回っていたはずなので、当時の日本では入手が難しかったのかもしれません(彼の私小説風…
今月開館した三鷹市吉村昭書斎へ。 作家・吉村昭の妻の作家・津村節子から寄贈された書斎を移築して三鷹市が開設したのが「三鷹市吉村昭書斎」だ。 日曜で開設間もないこともあってか来場者は結構いた。無料エリアは壁面書架に吉村昭・津村節子の著作が並び、津村節子が吉村昭と書斎について語る映像が上映されている。 有料の書斎エリアには企画展示と再現した書斎・茶室がある。 有料無料の両エリア合わせて10人未満だったが施設が小さいので少人数でもいっぱいになる。 同じ三鷹市の三鷹市美術ギャラリーにある太宰治展示室と同じような規模の施設だ。 現在の企画展示は「三鷹で暮らした吉村昭 三鷹市収蔵資料展」 吉村昭の著作の一…
解体新書訳出の過程を描いた吉村昭さんの「冬の鷹」を読みまして、前野良沢さんと杉田玄白さんの対比がまるで研究者とビジネスパーソンとの対比のようで非常にリアリティ深く、しみじみかんたんしました。 主人公は前野良沢さんなので構成は前野良沢さん寄りではあるのですが、杉田玄白さんが嫌な風に書かれているかというと個人的にはそこまでの印象は抱かず、どちらも立派で必要な人物だったように映ります。それでいて、得られた名声や富は両者間に圧倒的な格差がありますので、そういうところがまさに世の中だよなあと。 あと、吉村昭さんの地元である日暮里界隈の描写が良すぎて、そのパートだけ優れた紀行文みたいになっているのにもかん…
価値観をアップデートするにはどうすればよいか…ということを考え始めたということは、自分のアップデートが止まったということ。 私の場合、読書がアップデートになっていたようです。習慣になったのはたぶん小学校高学年頃で、「本を読まないと眠れない」「買った本はその日のうちに読了する」という自覚がありました。 作家で言えば遠藤周作、吉村昭、北杜夫、辻邦夫、三島由紀夫、南木佳士、ジャンルで言えば歴史小説が好み。古典文学だと平家物語を「漫画~現代語訳~原文」と読み進めたりもしました。そしていきついた問いは「近代とは何か」で、そこから江藤淳などの評論に進んだのが10~20代です。 本屋に行くたびに「この本を全…
陸軍二等兵 比嘉真一を読みました。著者は吉村昭です。 話は沖縄戦の最後の最後の数ヶ月を描いた物です。15歳の比嘉真一少年が鉄血勤皇隊として徴兵された胸の内を事細かに綴った物です。吉村昭の作品は大好きでかなり読んで居ます。特徴は実に丹念な取材で集めた情報を元に物語を作り上げるスタイルです。この作品も那覇市内にアパートを借り長期滞在して取材して居ます。彼の作風は町屋に有る記念館を見学すると、良くわかります。 戦争が良い悪いという議論とは別に、生き残った少年、少女に取材をするとかなりの人から「初めて敵を見た時、口惜しくて。手榴弾でやっつけたかった」そんな言葉に衝撃を受けたと取材ノートに綴られて居たそ…
お昼にJR中央線吉祥寺駅まで行き、駅近くの食堂でカキフライ定食をいただきました。 定食には、サラダ、みそ汁、筍の炊き込みご飯、おかず皿、刺身、デザートが付いています。 美味しい昼食をいただき、井の頭公園へ行きました。 公園内の「ブルースカイコーヒー」というお店で、ねこドーナッツを購入。 井の頭線井の頭公園駅方面に向いました。途中に建物と建物の間の先で営業している洋服屋さんを見かけました。 「にこぼし」という飲み屋さんは、本日開店のようです。 最近開店した、シャララ舎。 琥珀糖という、お菓子を販売していたので入店してみました。 2階に喫茶余白というカフェもあるようです。 お店でドライフルー…
●概要●ミュージシャン等20名●漫画家111名 ●他漫画家:情報不足・① ・② ・③ ・④ ・⑤ ●ゲームクリエイター14名 ●小説家103名 ・他小説家: ・① ・② ●哲学者1名●ファッションデザイナー2名 ●写真家2名●映画サイト運営者1名 ●概要 現在241名分のリストを掲載。 このコーナーは「映画人のオールタイムベスト(個別)」に掲載した以外の漫画家、アニメーター、ゲーム開発、シンガー、作曲家、小説家、その他クリエイターが影響を受けた・好きな映画のリストをまとめた掲載先のリンク集です。
京阪石清水八幡宮駅から徒歩10分くらいのところに変わった神社があります。その名を「飛行神社」。創建は1915(大正4)年。創建者は二宮忠八。飛行機好き、特に日本の航空史に興味がある方ならこの名をご存知の方も多いことでしょう。 1891(明治24)年にゴム動力の模型飛行機を飛ばし、ライト兄弟と同時期に有人の「飛行器」(忠八の造語)の製作に取り組んでいた人物。ライト兄弟の有人動力飛行成功を知り、製作中の機体を叩き壊したのだとか。 さて、神社らしくない入口を入ると鳥居があります。 花手水はよく見かけるようになりましたが、ヒコーキ手水というのは初めて見ました。 本殿の前にはギリシャ風の建物が。 大阪湾…
1日読書 島抜け 吉村昭 (新潮文庫) 1p〜21p 紙魚の手帳 Vol.11 (東京創元社) 215p〜278p 2日購入 母影 尾崎世界観 (新潮文庫) オーバーヒート 千葉雅也 (新潮文庫) 読書 チンギス紀 九 日輪 北方謙三 (集英社) 284p〜読了 本屋で立ち読み 島抜け 吉村昭 (新潮文庫) 22p〜49p 紙魚の手帳 Vol.11 (東京創元社) 279p〜287p 1947 長浦京 (光文社) 308p〜319p 3日購入 乱歩殺人事件―「悪霊」ふたたび 芦辺拓 (角川書店) 読書 島抜け 吉村昭 (新潮文庫) 50p〜91p 乱歩殺人事件―「悪霊」ふたたび 芦辺拓 (角川…
吉村昭『高熱隧道』を読んだ。後半が怖い。自然とはかくも、という感じがする。流しの締まりが悪く、結構ぐいっと締めなければぴちょぴちょ垂れてくるが、最近その「ぐいっ」の要求値が上がった感があり、壊しそうでいやである。あるいは、そもそも、水道はパッと締めて適当に立ち去るものであり、いちいちいちいちこれで大丈夫かな滴が垂れてこないかなと潜在的に恐怖するのは非常にストレスである。これでもパッキンだか部品だかを替えてもらった過去はあり、それでもこんなもんか、と思ってしまう。こういう、負わなくてもいいプレッシャーが背後にへばりついているのはきらいだ。やたらと眠い。
吉村昭の平家物語 (講談社文庫) 作者:吉村昭 講談社 Amazon 平家物語の平明な現代語訳。原文が美文で名高いゆえ、その平明さに多少の物足りなさを感じたが、歴史小説の大家(吉村昭)が訳したという安心感が完読の助けになった。 初版が子供向け(講談社 『少年少女古典文学館 平家物語』)として刊行されたためか、分かりにくい漢字(人名や国名など)にはルビが振られ、源平両家と皇室の家系図、畿内および主たる合戦地の地図も付いている。法皇・上皇・太政大臣・左大臣・右大臣といった皇族貴族の役職と上下関係、当時の武士・僧侶階級の立ち位置、京都周辺の地理や旧国名などの知識が多少あれば、簡単に読み進めることがで…
江戸末期,難破した幕府の御用船からこっそり米を奪った漁師たち.村ぐるみの犯罪は完全に隠蔽され,平和な生活は続くかに見えたが,ある日一通の書簡が村に届く.難破船に隠されていた意外な事実が明らかになる時,想像を絶する災厄が村に襲いかかる.追い詰められた人間の破滅に向う心理に迫る長編歴史小説――. 江戸浅草に御米蔵を建て,新造後7年以内の廻船を通じて諸国の廻米を収蔵する「御城米船」制度を,江戸幕府は1620年から開始した.公儀の船として年貢米の輸送を任じられた御城米船は,幟に「朱の丸」が描かれ,乗組員には保証人が必要とされた.海難事故によって年貢米を損じた場合,関係者全員が死罪とされるほど厳格なもの…
(写真:ねとらぼ) 大門剛明さんによるリーガルミステリー小説『完全無罪』が7月にWOWOWプライム(WOWOWオンデマンドで配信)で連続ドラマ化。 映画「星の子」やドラマ「MOTHER マザー」で知られる大森立嗣が監督・脚本を、WOWOWドラマ初出演となる広瀬アリスさんが主演を務めます。 同作は、21年前の少女誘拐殺人事件で冤罪が疑われている容疑者の再審裁判に携わる、若手弁護士・松岡千紗(広瀬さん)を主人公としたヒューマンミステリー。 松岡自身も事件で監禁された被害者の1人であるという境遇を抱えながら容疑者と対峙し、事件の真相に迫る姿が描かれます。 広瀬さんは今回のキャスティングに「このお話を…
「高熱隧道」 吉村 昭 著 新潮文庫 昭和50年7月25日 発行 令和5年12月5日 第71刷 黒部第三ダムは いかにして作られたか 黒部第三発電所 着工・・昭和11年8月 (欅平~仙人谷まで) 完工・・昭和15年11月 黒部川上で行方不明になったのは 富山第35聯(れん)隊所属の中尉・少尉ら青年将校7名であった。彼ら将校たちは佐川組が請け負っている軌道トンネル工事が 世界的にも極めてまれな特異な性格を持っていることを知り、やってきたのだった。 隧道は温泉の湧出する地帯を通る、それを強引に貫こうとする工事であった。坑内には熱い湯気が充満し、その熱さのために奥までは行けない・・と。それを将校たち…
ともぐい:河﨑秋子著ののレビューです。 ☞読書ポイント 感想・あらすじ (ネタバレなし) 河﨑秋子プロフィール 合わせておすすめ ブックソムリエでも紹介されました。 ☞読書ポイント 熊との死闘シーンはもちろん、その他のシーンも壮絶。前半と後半とで雰囲気がガラッと変わる。そして結末の意外性に思わず唸る。いろいろな意味で想像を超えて来る圧巻の作品。新たな熊文学、間違いない。 直木賞受賞作 ともぐい 感想・あらすじ (ネタバレなし) いやいやいや~~~ものすごいものを見てしまった―――そんな一言が読み終わった時の感想です。読んだのだけど「見た」という感覚。すごかったです。 もともと「熊文学」が好きな…
吉村昭と津村節子:波瀾万丈おしどり夫婦 作者:谷口 桂子 新潮社 Amazon どちらも熱心な読者と言うわけでもないのに吉村昭津村節子関連の本には心惹かれる 作家夫婦でどちらも著名だが三浦朱門曽野綾子夫妻にはあまり惹かれない 昭和一桁だから仕方ないけど吉村昭 妻にベタ惚れの割には横暴で甘ったれ