現実がそのとおりにならないから理想なのである。理想は現実をはかるものさしであり、テコの支点のように、そこから現実をうごかしていこうとする。 *** ひとりよがりの甘さをふくまない生はない。というより、甘さなしに生を保つことはできない。生きていることじたいがうれしいことであり、よろこばしいことであり、ありがたいことであり、おいしいことであり、北大路魯山人のいうように「うまいは甘い」ために、甘くなるようにできている。これをきびしくしようというのは無理筋である。 行住坐臥、いつも死を見据えながら生きるというわけにいかない。生はそれじたいが認識の甘さによって保たれているのである。 生活設計をたえず修正…