万年筆ばなしのつづき。 *** ペンもキーボードもフリックもなかったら、つけペンと毛筆しかなかったら、ものを書くひとはこんなにふえなかったかもわからない。かんたんに書けるから、書いてしまうのである。ことほどさように、道具の進歩があたえる影響はおおきい。 日本の万年筆の黎明期といえば丸屋、のちの丸善である。丸屋をおこした早矢仕有的は、福沢諭吉の門下生のひとりだったそうである。 丸善がだしている『万年筆の印象と図解カタログ』の復刻版では、万年筆の由来について、当時の文具担当であった金沢万吉氏からきているという説にかんたんに言及してはいるものの、「シカシ之は請合ひません。真の命名者が誰であつたか解り…