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住吉の長屋

(一般)
すみよしのながや

安藤忠雄の初期作品である個人住宅。1979年度日本建築学会賞受賞。長屋を改装したコンクリート打ちっぱなしの建物で敷地を3等分して、両端を部屋、真中に中庭がある。部屋から外に向けた窓はなく、中庭側はほぼすべてガラス張りとなっている。どの部屋からも中庭を通って他の部屋に移動するため、雨の日にはかさが必要である。

個人住宅のため、内部の見学は不可能。

2008年の安藤忠雄コメント

建築をぬける風

私の初期の仕事である「住吉の長屋」の核心は、狭い敷地の三分の一の面積を占める中庭の存在にあった。
住まいの中に直に自然が入り込んでくる分、冬の寒さは厳しい。
雨の日には傘をさしてトイレに行かねばならない。
住まい手に不便な生活を強いる提案は、ときに建築家の横暴と批判を受けた。

だが、住まいの何を喜びとするかは、そこで過ごす人間の価値観の問題である。大阪下町の猥雑な都市環境を前に生活とは何か、住まいとは何かを徹底的に考えた末、私は、自然と共にある生活にこそ人間生活の原点があるという結論に行き着いた。スペース、コストともに極限に近い条件下での都市住宅――だからこそ安易な便利さより、天を仰いで“風”を感じられる住まいであることを優先した。

この小住宅を原点として、今日まで30年間余り建築活動を続けている。年代を重ねるごとに仕事の規模は大きく複雑化して、現在は欧米から中東アジアまで、世界各国で都市プロジェクトを手掛ける状況だ。

だが、“建築を通じて何を表現するか”という根本の姿勢は30年前から何も変わっていない。15坪足らずのコンクリートの長屋、中東のアブダビで計画中のモニュメンタルな文化施設、あるいは現在、東京で進めている環境を主題とした都市再編プロジェクト――いつも心に描いているのは、人々の心に生の感動をもたらす建築をぬける“風”の情景、自然と共生しつつそこに住まう人間の意志を表現していく建築だ。

安藤忠雄

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