翻訳家、評論家、アンソロジスト。1942年生まれ。 浅倉久志と並ぶ、日本最強のSF翻訳家。 『SFマガジン』誌上に連載していたSFスキャナーにおいて多くの海外SFを日本に紹介。(翻訳活動も含めた)後の日本のSFシーンに多大な影響を与える。 また、カート・ヴォネガットの翻訳に際して採用した文体は、村上春樹にも影響を与えたといわれる。 一時、活動を休止していたが、1996年に『アインシュタイン交点』(サミュエル・R・ディレイニー)の出版で復活。
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吸血鬼は夜恋をする: SF&ファンタジイ・ショートショート傑作選 (創元SF文庫)作者:ヤング、マシスン他東京創元社Amazon 伊藤典夫が初めて単独編纂した同タイトルのアンソロジイ(ショートショート23編)に、 〈SFマガジン〉〈奇想天外〉の掲載作9編を追加した、全32編。 「理屈抜きで楽しんでいただけるような小品を選ぶよう心懸けた」と、 翻訳者あとがきにあるように、ちょっとした時間にちょこっと楽しめる作品ばかり。 傑作アンソロジーという風に構えないで、気軽に手にするのが良いだろう。 ショーショートばかりで、32編と数が多いので、 恒例のベスト3だけでなく、ベスト5、ベスト10も選出してみよ…
20日間ほどをかけて、ようやくカート・ヴォネガット・ジュニアの第6長編にして代表作の一つ、『スローターハウス5』(伊藤典夫訳、ハヤカワ文庫)を読み終えました。 作者のドイツ方面での第二次世界大戦従軍体験、中でも連合国側でも1963年までひた隠しにしていたドレスデン爆撃(本作によるとヴォネガットは死者数だけを取り上げて広島より被害が上だったという)による凄惨さと(実際には戦闘シーンはほとんど描かれていなく捕虜体験を中心としている)、SF的ギミックの「時間旅行」による時系列順でない記述、トラルファマドール星人による主人公のトラルファマドール星への誘拐、といった要素が闇鍋のようになっていて、読むのに…
串カツが好きです。近くのお店でたまに売り出される「衣がガジガジ」のタイプが好物。特に「ししとう」や「玉ねぎ」がおいしい。油もさっぱり目なのでガジガジとした衣と一緒に野菜を食べるのが美味しくて好きでした。 今回はカート・ヴォネガットさんの『スラップスティック』感想を書いていこうと思います。 スラップスティック 作者:カート ヴォネガット,浅倉 久志 早川書房 Amazon ※以降ネタバレを含みますのでご注意ください。 本作の特徴的なアイデアは「人工拡大家族」でしょう。主人公のスウェイン医師は緑死病で人口減を招く世界でアメリカ合衆国大統領に就任します。そして彼が行った施策が「全ての人にランダムにミ…
ハル・クレメント(Hal Clement)の短編は3本しか邦訳されていないのだが、そのひとつ。なお、この記事ではネタバレに全く配慮していないので注意。 初出:Star Science Fiction Stories No. 2, 1953 邦訳:大野二郎=訳, 『SFマガジン』1965年3月号(No. 66)イラスト=表記なしだが、おそらく金森 達*1 S-Fマガジン 1965年03月号 (通巻66号)早川書房Amazon あらすじ 地球の地殻内には液体生命体が棲息していた。そのひとりのペントング(Pentong)は、命令を受けて赴いていた南への探検行から帰還する。彼が帰り着いた都市はメキシコ…
不定期読書感想文。 以前 読書日記 2024年2月14-20日 で「後日出します」と書いていたカート・ヴォネガット・ジュニア(伊藤典夫訳)『スローターハウス5』の感想です。 これも『百年の誤読』のおすすめ本です。ここですすめられてなかったら一生手に取ることはなかったと思われる本です。一応ジャンルはSFなんだと思いますが、SFとして読まなくても十分読めます。というか、どちらかというと戦争モノかもしれない。ヴォネガット本人が実際に経験したドレスデン無差別爆撃を軸に、ストーリーは主人公を「ビリー・ピルグリム」という人物に据えて語られますが、作中で何度か「わたし」として本人が出てきます。つまりこれは三…
不定期読書感想文。 以前 読書日記 2024年1月31日-2月6日 で「感想長くなったので後日」と書いていたレイ・ブラッドベリ(伊藤典夫訳)『華氏451度』です。 本を焼く話というのは知っていたので、本好きとしてはわくわくして読み始めたのですが期待外れというか、マジで合わなかった。世間一般の評価は高い小説なんでボロクソ書くとこっちが馬鹿に見えるかもしれませんが、でも好きじゃなかったんだからしょうがない。 以下結末までネタバレしてるので畳みます。また、ジョージ・オーウェル『1984』のネタバレもあります。あと、予告しているようにかなりネガティブな内容なので、不愉快になると思われる方は自衛してくだ…
元旦に能登半島地震が発生した時、私は今年がどういう年になるのかを暗示する様な出来事だなと思い、ひどく落ち込みました。可愛いキャラクターに癒されようと「ちいかわ」を見たのですが、結構作品世界が過酷でどこも世界は優しくないんだなと思いました(「ちいかわ」自体は嫌いでは無いです)。 で、昨日突然あの鳥山明先生の訃報を知ってあまりのリアリティのなさに困惑しています。嘘だ、まだ早いだろ!とかいうよりリアリティ(実感)がありません。 おそらくこれからじわじわと喪失感がやって来るんでしょうけど、やっぱり今年はヤバい年になるんじゃないですかね?気が付いたら3月の上旬で、時の流れの速さを感じてまたそこでもどんよ…
ブラッドベリ編Timeless Stories for Today and Tomorrowで読んだ、ナイジェル・ニール“Jeremy in the Wind”。不可思議な淋しさと俳味がこころに永く残る、忘れがたい短篇です。いわゆる異色作家短篇系のアイデアストーリーとはどこかちがう味わいを感じました。マン島出身だとか、一時期伊藤典夫が集中的に読んでいたといったきれぎれの情報は入ってきましたが、その後単著を手に取ったわけでもなく、本国でいまも読まれているかなど気に留めたわけでもなく、そのままいつか物語のあらすじは忘れてしまいました。数週間前、Times Literary Supplementのp…
読書日記 2024年2月14-20日 ・堀辰雄『風立ちぬ』 ・フランツ・カフカ(原田義人訳)『変身』 ・渡辺航『弱虫ペダル』11-12巻 ・アイザック・アシモフ(川村哲郎・仁賀克雄訳)『夜来たる』 ・泉鏡花『春昼・春昼後刻』 ・江戸川乱歩『押絵と旅する男』 ・谷崎潤一郎『陰翳礼讃』 ・カート・ヴォネガット・ジュニア(伊藤典夫訳)『スローターハウス5』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『悪童日記』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『ふたりの証拠』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『第三の嘘』 ・正岡子規『歌よみに与ふる書』 以下コメント・ネタバレあり
読書日記 2024年1月31日-2月6日 ・米澤穂信『真実の10メートル手前』 ・米澤穂信『王とサーカス』 ・米澤穂信『インシテミル』 ・ほったゆみ、小畑健『ヒカルの碁』13-23巻 ・ロバート・A・ハインライン(矢野徹訳)『月は無慈悲な夜の女王』 ・レイ・ブラッドベリ(伊藤典夫訳)『華氏451度』 ・ヴィクトル・ユーゴー(豊島与志雄訳)『レ・ミゼラブル(完全版)』(前半) ・龍門諒、恵広史『BLOODY MONDAY』1-5巻 以下コメント・ネタバレあり
今日もお仕事です。 今回は東京大学の卒業生を調査したら、50%近くが世帯収入1000万以上だったというニュースについて思うことを書いていこうと思います。 東京大学は「重課金しないと手が届かない大学」か データから見えた結論 (2024年2月11日掲載) - ライブドアニュースnews.livedoor.com 『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(著:マイケル・サンデルさん 早川書房)という本があります。 実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル サンデル 早川書房 Amazon 「運も実力のうち」という言葉はありますが、この本はその逆で「実力も運のうち」です。 このタイトルにも表…
今日は休日でした。 今回は最近読み終わった『スローターハウス5』(著:カート・ヴォネガット・ジュニアさん 訳:伊藤典夫さん ハヤカワ文庫)について書いていきたいと思います。 ※ネタバレを含みますのでご注意ください。 『スローターハウス5』は捕虜となりドレスデン無差別爆撃を受けた著者自身の戦争経験を交えた半自伝的な長編です。なぜ「半」なのかと言えば、作中で主人公であるビリー・ピルグリムはトラルファマドール星人の誘拐されて、彼らの星の動物園に収容されるなどの創作エピソードも含めて語られるからです。 そしてビリーはトラルファマドール星人から時間の本質を学んだ結果、地球人のように過去から未来へと時系列…
新装版 密閉教室 (講談社文庫) 作者:法月 綸太郎 講談社 Amazon 原著1988年刊行(デビュー作) ※ふつうに犯人とかのネタバレしてるので注意 2024/1/21(日)~23(火) 1/21(日) なんかここ数日ミステリ読みたい気分なので読み始めた。なんでだろう? 小市民シリーズがアニメ化決定したから?(それで積んでた『春期限定いちごタルト事件』を開いてみたけど文体がラノベだったのでウッ……となってすぐに閉じた。代わりにこれを選んだということ?) とりあえず第一部まで読んだ。 ~p.123 序章「プレリュード」だけ三人称で、本編は男子主人公:工藤の一人称になった。高校3年の11月の話…
河出文庫から出ている、10年ごとに区切ったSFアンソロジー。 以前、『20世紀SF<4>1970年代接続された女』 - logical cypher scape2を読んだことがある。 なんでそんな部分部分だけ読んでいるのかというと、古典をちゃんと読んでいく真面目さが自分にはないからで、時々、古い作品を読む機会があると、時代を越えて残っている作品はやはり面白いなあとは思うのだけど、やっぱり新しい作品読みたいし、そうすると古い作品を読む時間がない……となる。 では何故今回これを読んだかというと、どこかのブログでディレイニーとヴァーリイは似ている(あえて言うなら、という但し書き付きだった気がするが)…
「ビジネスのプロがおすすめする必読書一覧」 みなさん、本は読みますか? 本ってすごいと思うんですよね、一冊読めば書いた人が勉強したこと、体験したことを一気に手に入れることができるんで、最高の先生かなぁと思っています。 2024年も是非、読書をお勧めします。 目次 ビジネス書おすすめその1 ビジネス書おすすめその2 ビジネス書以外のおすすめ本 自己啓発のおすすめ本 スピリチュアルのおすすめ本 ビジネス書おすすめその1 これらの本は、ビジネスだけでなく、知識やスキルを広げるのにも役立つ内容です。ぜひ読んでみてください。 エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする :この本は、自分の本当に大切…
年末年始の読書記録。web小説を除くと過去を振り返る物語を読んでいた。しかし過去の振り返り方も一様では無かった。 スローターハウス5 仮面の告白 『高い城・文学エッセイ』 高い城 「偶然と秩序の間で―自伝」 web小説 『バスタード・ソードマン』 『落ちこぼれ衛士見習いの少年。(実は)最強最悪の暗殺者。』 スローターハウス5 カート=ヴォネガットジュニア著、伊藤典夫 訳『スローターハウス5』。 今年は結果的に第二次世界大戦を扱った映画作品を観た。これを機に第二次世界大戦におけるドレスデン爆撃を扱った本書を手に取った。 スローターハウス(Slaughterhouse)は動物を屠殺する建物を意味し…