元大蔵官僚の経歴をもつ異色の歴史学者。戦国期の天皇の王権を評価する学説で知られる。 1942年京都府に生まれる。1967年京都大学経済学部経済学科卒業。1976年京都大学大学院文学研究科博士過程単位取得退学。1987年京都大学より文学博士を授与さる。この間、大蔵省財務局事務官、京都大学文学部助手、国立歴史民俗博物館助教授、横浜市立大学教授を経て、現在、国際日本文化研究センター教授。 リスト::学者::人文科学
天皇家は、二千年の長きにわたって続いています。平清盛や織田信長のような強大な武力を持った武士が登場しても、天皇家は途絶えることなく現代まで続いていますが、室町時代には、足利義満の皇位簒奪計画により、その存続が危ぶまれた時期がありました。足利義満は、とんちで一休さんに負けてばかりいる情けない将軍様の印象が強いですが、実際の足利義満は、誰も逆らえないほど強大な権力を握っていたのです。
5月21日の政府有識者会議では以下のような意見が出された。 国際日本文化研究センターの今谷明(いまたに・あきら)名誉教授「女性宮家は早く何とかしなければいけない。とりあえず男系で続いていくしかないが、準備はしておく必要がある。女系天皇の場合、欧州のどの国をモデルにするか研究を始めなくてはいけない。皇族に戻ってもいいとおっしゃる旧宮家の方がどのぐらいおられるか調査が必要ではないか」(産經ニュース 2021.4.21 23:23) 天皇は日本固有の存在であり、欧州に範型を見出すことなど不可能である。今谷氏は<皇室>と<王室>の違いが分かっているのだろうか。また、例えば側室制度の議論を避け、<女性宮…
先日YouTubeにて、「大寧寺の変」の新説を語る動画を見たおっさん。 ja.wikipedia.org www.youtube.com あまりに面白すぎて、おっさんにとっては「室町の王権」以来の衝撃でした。 室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書 978) 作者:今谷 明 中央公論新社 Amazon そんなわけで「ちょっと大内家について勉強しよう」ということで、買いました「大内氏の興亡と西日本社会」。 大内氏の興亡と西日本社会 (3) (列島の戦国史 3) 作者:長谷川 博史 吉川弘文館 Amazon まあまだ全然読んでないので、感想などは書きようがないのです。 しかし、まじすごいで…
室町期の往来物に「大津坂本馬借・鳥羽白河車借」と謡われた、中世の運送業者たち。江戸期に入って坂本馬借は衰退し、大津馬借は繁栄する。白河車借は既にない。最後のひとつ、鳥羽車借はどうなったのだろうか? 鳥羽車借の全盛期は、織豊期から江戸初期にかけてのようだ。1568年には、信長の命で御所修理のための木材数万石を運搬している。1578年には秀吉による播磨侵攻を受けて、大量の米を鳥羽より大物の浦戸へと運搬しており、その補給にひと役買っている。また家康の為にも木材・石の輸送を行っている。 さて大坂の陣が終わり、ようやく平和な世が到来する。京の人口は増大し、米の消費も急増する。鳥羽車借の御用の主力は、やは…
お世話になっております。本日20時よりYouTubeチャンネル「春木で呉座います。」にて、「【呉座勇一の日本史講義】王権簒奪説は本当か? 足利義満の実像に迫る!!」を配信いたします。 室町幕府3代将軍、足利義満。金閣を建てたことで知られるこの人物については、天皇家に取って代わろうとしていたという説(王権簒奪説)が戦前から唱えられていました。 今谷明『室町の王権―足利義満の王権簒奪計画』(中公新書、1990年)が、史料を博捜して王権簒奪説を実証的に補強したことで、読書界に大きな反響をもたらしました。 作家や評論家が今谷説に賛意を示し、また追随したことで、今なお一般読者の間では影響力の強い学説とな…
悪御所だと!万人恐怖だと!好きに呼ぶがいい!! 余は征夷大将軍足利義教である。余の道を阻む者が仏ならば仏を殺し、神ならば神をも殺す。 籤引き将軍足利義教 (講談社選書メチエ) 作者:今谷 明 講談社 Amazon 前節からの続き 本稿において、足利義教は悪役で登場している。これまでの足利義教の歴史的評価は散々である。悪御所、万人恐怖と称され専制恐怖政治を布いた。彼の意向で誅殺された大名も少なくないとされる。当時の記録よれば、義教の逆鱗に触れ処罰された者は、公卿五九人、神官三人、僧侶十一人、女房七名、この数字には武士と庶民は含まれておらず、実数は更に増えるとされる。中には酒の酌が不調法として尼に…
今回は戦国大名が定めた「守護代」について榎本先生に教えてもらいました。いつものように長尺の動画になっているのですが、ポイントはひとつで「守護代と言ってもみんなが現地に赴任してたわけじゃなく、守護とともに京都にいた人もいた」ということです。またその場合に代理の代理で派遣された(あるいは現地採用で委任された)人のことを「小守護代(又守護代、又代とも)」と呼ぶということだけ覚えていただければ良いかなと。 以下、榎本先生に事前にまとめていただいた資料を引用しつつ、今回の動画を紹介します。1時間ほどの番組を収録するのに、毎回これだけの下調べをしていただいてます(正確には繰り返しの部分やぼくがコメントして…
中近世史としたが、何となく歴史を扱っているような本を纏めた。祖母は学術書を買うような人ではなく、学者の書いた本から作家、それから得体の知れない団体の纏めた雑学知識のような本まで買っているが、区別している余裕がないので一纏めにして置いた。 ・岩波新書(新赤版)277 高橋英夫『西行』1993年4月20日 第1刷発行・1993年5月14日 第2刷発行・定価563円・岩波書店・245+2頁西行 (岩波新書)作者:高橋 英夫岩波書店Amazon※ 帯あり「花を愛で,漂白の人生を送る・・・/伝説の歌人の心に迫る!/岩波新書/最新刊」裏表紙側折返しは『広辞苑』第四版の広告、『武家と天皇』と色違い。 ※ 栞…
この「天文法華の乱」を以てして「日本における宗教戦争のひとつ」と論じる人いるが、どうだろうか。宗教戦争の定義にもよるが、確かにそういう面もあるだろう。開戦に至った契機は、教義上の争いである「松本問答」なのだから。 だが教義上の違いが問題になったというよりも、叡山にとっては論争に負けて面子を潰された、という体面の問題の方が大きかったように思われる。この時代、体面を潰されて黙っていることは、己の権益を保証している社会的な地位が下がることに直結したから、叡山としては絶対に見過ごすことのできない大問題だったのである。 また京という強大な権益を生み出す都を、日蓮宗の手から取り戻したい、という思惑もあった…
中流の公家の日記を通して700年くらい追っていくと言う。それでも室町の武士と朝廷の関係が興味深い。自分のこの時期は今谷明さんの著作どまりなので、その先を垣間見た思い。 結構古文書のデジタル化は進んでいるのかしら。紙背文書だと難しいのかなあ。