もう間もなく河南省を離れ、錫山県、江蘇省に入る。車窓の外は曇りだがただ曇っているというだけではないただ事ではない視程の悪さで、スティーブン・キングの小説にあった霧の中から異世界の怪物が人を襲うみたいな怖さがある風景だ。 などと言っている間に南京に到着だ。河南省を歩いて気付いたことがあって、それは何故この地域にこだわりまた来たくなるのかということだ。それは第一に嘗て初めて訪中した1980年の経験が根底にあるからだ。北京から鄭州に入り初めて足を地につけたのが河南省であった。開封に行き洛陽に遊び西安まで行って帰国した。軟臥のコンパートメントを占拠して楽しかった記憶が老境に入って一層懐かしくなる。 第…