師門物語 下 冷泉は、「さあさあお急ぎ下さい」と浄瑠璃御前を促しますが、「次の土地はどこの国のどこか判らないで、ただ『よしみつ寺』と尋ねても、いったいどこの誰がよしみつ寺はどこの国のどの場所だと詳しく教えてくれるのだろうか」とお泣きになりますので、冷泉は、「今からよしみつ寺についてお話いたしますので、お聞き下さい。昔、天竺にいた月(がつ)蓋(かい)長者という者は、並外れてけちで欲張り者でした。僧の誰一人に対しても一切供養をしないで、日々贅沢な暮らしをしています。お釈迦様は、この後に月蓋が無間地獄に堕ちてしまい、決して救われることのないという月蓋の身の上を哀れにお思いになり、仏様の救いの一つの方…