さて氏綱であるが、彼は有名な「虎の印判状」を制定している。この虎の印判状がなければ、郡代・代官は支配下の郷村に公事・夫役の徴発などの命令を下すことができなかった。これまでローカル勢力に一任されていたこうした行為が、以後は伊勢氏の同意なしには、勝手にできなくなったことを意味する。つまりローカル勢力は、中間搾取の入り口を閉ざされてしまったのだ。 次の氏康の代になってから、こうした動きは更に進む。領国内の郷村に対してこれまで地元勢力から取られていた雑多な公事(諸点役)を廃止する代わりに、北条家に貫高の6%を納めさせるという制度を導入しているのだ。また郷村がローカル勢力に不当な行為を受けた場合、その訴…