読まずに積み上げられていく本の状態を“積ん読”というが、だとすれば、録画したのに視聴する予定のないまま放置しているテレビ番組のことは“積ん録”というのかもしれない。我が家のハードディスクには、見る予定のない番組のデータがギュウギュウに詰め込まれている。とはいえ、見ようという気持ちはあるので、安易に削除することは出来ない。むしろ、そういった“積ん録”されている番組の中にこそ、心に響く出会いに巡り合うこともあるから油断ならない。 先日、何の気なしに見た、2023年4月に放送されたETV特集『黒澤明が描いた『能の美』』は、まさにそういった類いの番組だった。『七人の侍』『赤ひげ』『生きる』などの作品で…