堀江敏幸『回送電車』(中公文庫 2008年) 堀江敏幸『一階でも二階でもない夜―回送電車Ⅱ』(中公文庫 2009年) 堀江敏幸は、この「回送電車」をシリーズ化していて、現在Ⅵまで出版されているようです。『回送電車』の冒頭に、「回送電車主義宣言」というのがあり、その趣旨を次のように説明しています。回送電車というのは、踏切で待っている通行人をあざ笑うかのように通り過ぎてますますイライラを募らせる存在で、特急でも各停でもなく役立たずな一方で業務上必要という中途半端で居候的な性格があり、これは自分の評論や小説、エッセイを横断する散文の性格に近いもので好感を持っていると。これは一種の偏屈の美学と言っても…