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一般線形群

(サイエンス)
いっぱんせんけいぐん

一般線型群GL(n,k)は体k上のn次元正方行列で行列の積に関して可逆な元全体を表す。ここで、kは、例えば複素数体Cまたは実数体R、あるいは有限体 F_{q}等である。


GL(n,k)の定義を式で書いてみよう。ここで、M(n,k)を体k上の正方行列としk^{\times}をkの0以外の元すべてとする。また、正方行列Aが可逆であるとは\det(A)\in k^{\times}と同値だと認めよう。すると、以下がGL(n,k)の定義となる。
 M\in GL(n, k) \leftrightarrow M\in M(n,k), det(M)\in k^{\times}
つまり、n次元正則行列と行列の積を二項演算とする群とも言える。


なぜGL(n,k)は群となるのだろうか。まず、n次正方行列A,B,Cに関して(AB)CとA(BC)の二つの行列の成分を直接比べてみれば(AB)C=A(BC)となり、行列の積の演算は結合法則を満たすと解る。よって、ここでGL(n,k)が群であるとは以下の3つの条件の成立を示す必要がある。一つは、AとBがGL(n,k)の元であれば、ABもGL(n,k)の元であるという条件。一つは、GL(n,k)に行列の積に関して単位元が一意に存在するという条件。そして最後の条件として、AがGL(n,k)の元であれば行列の積に関してAの逆元A^{-1}が一意に存在してA^{-1}\in GL(n,k)であるという条件である。


一つ一つ上の段落の条件をみてみよう。まずは任意の正方行列A,Bに関してなりたつ行列式の性質det(AB)=det(A)det(B)を想い出してもらたい。よって、すなわちA,BがGL(n,k)の元であれば、det(A),det(B)\in k^{\times}det(AB)=det(A)det(B)\in k^{\times}となるので、ABも可逆となりABもGL(n,k)の元である。次の条件をみてみよう、Eを対角成分が全て1でその他の成分が全て0であるn次正方行列としよう。すると、簡単な計算でCE=EC=Cの成立を任意のn次正方行列Cに対して確認できる。よって、Eは単位元の条件を満たす。更に、E'が CE'=E'C=Cを任意のn次正方行列Cに対して満たしたとする。ここで、Cとして特にEやE'を取れるので以下がなりたつ。まずEに注目するとE'E=E E'=Eであり、次にE'に注目するとE' E=EE'=E'となるので、結果としてE=EE'=E'E=E'となりE=E'である。よってGL(n,k)には行列の積に関して一意な単位元Eを持つ。最後に逆元の存在と一意性を示そう。まず逆元の存在はdet(A)\in k^{\times}という条件からクラメールの公式を使うと、GL(n,k)でAB=BA=Eとなる元Bの存在が解る。更に、B'として同じ条件をみたすとすると、B'A=AB=Eに注意するとB=B'BA=B'AB=B'が成り立つので、Aの逆元はGL(n,k)に存在して一意である。以上より、GL(n,k)が行列の積に関して群である。


GL(n,k)は非常に重要な群で、kとしてRやCを取り成分毎にユークリッド距離を入れるとGL(n,k)そのものが多様体となる。更に、GL(n,k)×GL(n,k)に積位相が入っているとすると、行列の積から作られる写像GL(n,k)×GL(n,k)→GL(n,k)( (A,B)→AB)と逆元を取る写像GL(n,k)→GL(n,k)(A→A^{-1}の両方が連続写像となる。よって、GL(n,k)は多様体でありかつ群としてその演算が連続であるのでリー群である。特に、対応するリー環は演算としてブラケット積[,]が入ったn次正方行列全体M(n,k)となる。さらに、GL(n,k)は代数多様体としても扱え、最も重要な代数群でもある。


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