琴腹 後一条院の御治世の時、中宮のお部屋に立てられていた琴の腹に鼠が子を産んだので、お仕えしている人たちが、これは一大事と言い合っていたところ、天皇様も、「このようなことは、先例が多くあることか」と、殿上人たちにお尋ねになりました。「置いてある日常の品でも、めったに手を触れない道具でもたまには気になることがあるから、鼠なども巣を作ることはないのに、それにも増して朝夕にお使いになっている琴でありますのに」というような話をして、あえて騒ぎだてをしないで、ひそひそと話をして過ごしていましたが、当時の第一の位にある大臣の宇治の関白頼通公が昔の例をいろいろとお調べになったものでしょうか、内裏にお出でにな…