レコード・レーベルとしてのヴァージン
イギリスで最も成功したインディ・レーベルでもあるヴァージンの歴史は、73年に遡る(当時ブランソンは23歳)。もともとは通販レコード会社だったが、その後小売店を始めて成功を収める。
その資金でレコーディング・スタジオを開設し、そのスタジオで出会ったのがマイク・オールドフィールドである。そのデモ・テープを聴いたブランソンが、レコード・レーベルの第一号契約アーティストとしてマイクを迎え入れ、製作したのが映画「エクソシスト」にも使用されたアルバム「チューブラー・ベルズ」である。
これは英米で大ヒットし、以後しばらくはこのアルバムの収益だけでヴァージン・レーベルの経営基盤が築かれたといわれる。
当時のレーベルは、マイク・オールドフィールドを始め、ゴングやファウスト、ロバート・ワイアット、ヘンリー・カウ、スラップ・ハッピーといったプログレ系・実験的なレーベルカラーを持っていたが、石油ショックの影響もあってレーベルも苦境に。それを救ったのが、EMIやA&Mといったメジャーから契約解除され、英国社会の敵として見られたパンク・バンド、セックス・ピストルズとの契約だった。
その後はニューウェーヴ系の発信レーベルの一つとして、XTCやマガジンと契約、他のレーベルを買収してカルチャー・クラブ、ヒューマン・リーグ、へヴン17、シンプル・マインズ、OMD、ジャパン、ジョン・フォックス、ジュリアン・レノンや、ベテランのジェネシス、フィル・コリンズ、ピーター・ガブリエル、ロジャー・ダルトリー、ロキシー・ミュージック、ブライアン・フェリーなども傘下に収めた。
87年にはヴァージン・アメリカを設立、レニー・クラヴィッツ、ポーラ・アブドゥルらの新人や、キース・リチャーズ、スティーヴ・ウィンウッド、ロイ・オービソンらを獲得。本体でもジャネット・ジャクソンやローリング・ストーンズも獲得に成功している。
その後、90年代に入ると航空業界に新規参入したヴァージン・アトランティックの資金調達の必要性に迫られて、レーベルを売却した。