Richard Brautigan(1935-1984) 小説家、詩人。 1935年1月30日、アメリカ・ワシントン州タコマ出身。 1984年、カリフォルニア州ボリナスの自宅でピストル自殺。 発見日は10月25日、死亡推定日は同年、9月14日とされる。 享年49歳。 和訳はその大半を、藤本和子が担っている。 その翻訳は、平易ではあるが臈たけており、 今をもってして、多くの日本人作家に影響を与えている。
ブローティガン 東京日記 (平凡社ライブラリー) 作者:ブローティガン,リチャード 平凡社 Amazon 『ブローティガン東京日記』リチャード・ブローティガン著 福間健二訳を読む。 ブローティガンが日本にいたのは「1976年5~6月、1ケ月半」だそうだ。旅にしては長いが、滞在にしては短い。 「はじめ」で第二次世界大戦・ミッドウェイ島で日本軍の攻撃により亡くなったエドワード叔父さんのことを書いている。大好きな叔父さんを殺した日本人に憎悪を抱いていたと。「17歳の時に芭蕉と一茶を読んだ」「日本の絵画と絵巻物を見た」。禅を知り仏教に興味を抱いた。嫌いで好きな国・日本へ―。 異邦人である彼のTOK…
ここに素敵なものがある 作者:リチャード・ブローティガン 百万年書房 Amazon 『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン著 中上哲夫訳を読む。 第一詩集『リチャード・ブローティガン詩集-突然訪れた天使の日-』リチャード・ブローティガン著 中上哲夫訳を全面新訳、おまけの詩をつけたものだとか。 久々に読んだが、ああ、いいなと思う。訳者もケルアック、ギンズバーグなどのビート・ジェネレーションに強い影響を受けているそうで、いい訳。 村上春樹がデビューしたとき、カート・ヴォネガットっぽいとかいわれたけど、この詩集を読むと、ブローティガンにも影響されたことがなんとなくわかる。 ライト・ヴァ…
不運な女 作者:リチャード・ブローティガン 新潮社 Amazon 『不運な女』リチャード・ブローティガン著 藤本和子訳を読む。 「遺品の中から彼の娘が発見した」ノートに綴られたもの。ミュージシャンなら未発表音源デモテープのようなものか。相変わらず好きな文体、いい翻訳。日記と創作が入り混じった形式。 散文のような、ハードボイルドチックな文章(もしくは村上春樹チックな文章)は、すべてを言い表さずに70~80%に留めておいて、読み手の想像力に委ねてしまう。読んだあと、もぐもぐと反芻する。人それぞれに、そのうち、世界が投影される。 本人は、草稿ノートのつもりのようでもあり、そうでもなかった。そのまま刊…
あわてるな むかしはみんな あるいてた ―田舎の交通標語― *** マーブリングつながり。 krokovski1868.hatenablog.com マーブリングたまごやきのつくりかた。 1 たまごやき器に油を少量ひく 2 たまごをたまごやき器に割り入れる 3 かきまわす 4 お好みで調味料をふる 5 くるくる巻く 洗いものを最小限にし、手間をはぶき、かつ原料の無駄をへらそうとしたらこうなった。たまごがきちんと混ざらないので、仕上がりはどうしてもまだらになる。たまごを一度に割り入れず、2から5をたまごの数だけくりかえすようにすれば、多少マシになるが、そのぶん手間はふえるし、たまごが鍋にくっつく…
不安と緊張が世界を満たしつつある中で、平易で美しい文体で少しの謎を裡に秘めた短篇小説62篇は、泡のような休息の縁、過ぎ去った日乗への作者の思いに気持ちが爽やかになります。どこからでも、一篇からでも読めるのも良いですね。 今日はアルファロメオ4cスパイダーに乗って、家族で超短距離ドライブをし、エイトと散歩。緩い日乗、午前中を過ごしました。何もなく他愛ない、大切な日乗に感謝。
要するにブローティガンは“So the Wind Won't Blow It All Away”を『ハンバーガー殺人事件』と訳されるタイプの作家だったのだ。そういうタイプの作家だと“思われていた”。憂鬱や喪失を、たとえば西瓜糖の言葉で表すような人なのだ、と。『ハンバーガー殺人事件』を読み始めて、すぐに新潮文庫版『芝生の復讐』の表紙を思い出した。ソファやテーブル、フロアランプが並んだ水辺の写真。私が初めて読んだブローティガンの作品は、2008年に新潮文庫から発行された『芝生の復讐』だった。単行本の発売は1976年だから、ほとんど復刊のようなかたちである。不思議な写真だ。心の内側の柔らかい部分が、…
「小説ってこんなに自由なんだ!?」 プレイリスト「2022.06_In Watermelon Sugar」 「小説ってこんなに自由なんだ!?」 雄鶏たちが時をつくる。嘴のトランペットの音が大きく鳴り響き、遥かまで伝わる。日の出のほんの少しまえ、わたしはアイデスに到着した。 アイデスの向い側のどこかの農家から逃げてきた二羽の白い鶏が地面をつついていた。わたしを見ると、飛んで行ってしまった。逃げ出してまだ間がないのだな。翼が、本物の鳥たちのように動かないので、そうとわかる。 リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』(藤本和子訳、河出文庫/原著:“In Watermelon Sugar”(1968…
「それが詩だと思えれば何でも」 作:津森ソト 今書いているこれは詩なのだ、と思えれば何でも書ける。これは発見だった。発明だと思った。でも、僕の発明ではない。 だから皆、詩を書いてきたのか。 形式のことは今はいい。短歌や都々逸なら知ってる。書いたこともある(水準は知らない)。だけど、詩人の書いた詩を読めばそれが、まさに詩であって、散文でも、まして小説や論文ではない――詩、でしかありえないもの。として成立している、ということはわかる。 今日の昼は僕は、43歳・男と6歳・男で素麺をシェアした。麺3束と、ハムの千切り(2枚分)、錦糸卵(1個分)。 ロンメル進軍―リチャード・ブローティガン詩集 作者:リ…
★★★☆☆ あらすじ アメリカの鱒釣りにまつわるいくつかの物語。 感想 数ページで終わるような短い話が幾つも収められている。各話はそれぞれつながっているような、つながっていないような関係性で、それぞれの物語自体も抽象的で分かりにくいものとなっている。文章が難解というわけではないのだが、読んだところで何が言いたいのかよく分からない感じだ。正直なところ、読んでいてかなり苦痛だった。 本編をなんとか読み終え、巻末の訳者のあとがきで解説なり時代背景の紹介なりを読めば一息つけるだろうと思っていたら、これもまた同じ調子で抽象的で分かりづらい話ばかりが続いたので、心が折れそうになった。ただ、文庫化の際に加え…
【あ】アーモンドの樹(ウォルター・デ・ラ・メア)アイオワ野球連盟(W・P・キンセラ)愛しているといってくれ(マージョリー・ケロッグ)愛の果ての物語(ルイザ・メイ・オルコット)青い花(レーモン・クノー)赤い高粱(莫言)赤毛のサウスポー(ポール・R・ロスワイラー)悪魔なんかこわくない(マンリー・ウェイド・ウェルマン)悪魔に食われろ青尾蠅(ジョン・フランクリン・バーディン)悪魔の収穫祭(トマス・トライオン)悪魔のベッド(ジャン・レイ)悪魔はぼくのペット(ゼナ・ヘンダースン)悪夢の化身アシスタント(バーナード・マラマッド)明日に別れの接吻を(ホレス・マッコイ)熱い太陽、深海魚(ミシェル・ジュリ)あっぱ…
日時 2024年3月24日(日)13:00開会(12時30分より受付) 会場 札幌大谷大学A棟3F・A304 交通アクセス(札幌大谷大学) 校舎案内・周辺環境(札幌大谷大学) インフルエンザや新型コロナウイルス感染対策として、以下の点にご留意ください 発熱等の風邪症状がある場合は、来場をお控えください。 会場入口には消毒液を設置しております。手指の消毒にご協力ください。 会場内においては、適宜マスクの着用をお願いします。 PDF版ポスターダウンロード(※発表タイトルに一部誤りがあり、3/8にポスターを差し替えました。改めてこちらからダウンロードをお願いします) 〈開会の辞〉 上戸 理恵(札幌大…
なんだか突然本と映画がするする入ってくるようになって、なんなんだ!と戸惑いながら楽しんでいる。 本 斎藤幸平 『ゼロからの『資本論』』 自分のやっている仕事がクソだと喝破されてしまって、正直めちゃくちゃ落ち込んでいる。わかっていたことだったけど。『ブルシット・ジョブ』も読まないとなあ。 レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』 不思議な読書体験だった。ブラッドベリ、もともと大好きだけど、今まで読んだ中で間違いなく一番好き。 沼田まほかる『九月が永遠に続けば』 胸糞わるかった。読むんじゃなかったと心底思う。記憶から消したい。 カミュ『異邦人』 そんなに異邦人でもないよなあと思いながら読んでたけ…
表紙 この小説では3歳から34歳までの自身と、アメリカの架空事件を描いている。製本の代金が高いのは、それだけ原価がかかってしまったということだ。最近、Kindle版に不具合があり、それが修正不能というわけで販売停止した。もしだれかが一太郎からKindleデータをつくるための、わかりやすい手段を教えてくれたらいいのにとおもう。せっかくKindleが売れても返金しなきゃならない悔しさよ。今回は小説のために参考にした本、そして書きながら聴いた音楽をご紹介しよう。 *種本 サム・シェパード『モーテル・クロニクルズ』から作品構成を借用。 チャールズ・ブコウスキー『ポスト・オフィス』、『勝手に生きろ!』、…
取り急ぎ記録……。 ●李龍徳『死にたくなったら電話して』河出文庫 www.kawade.co.jp ●波田野節子『李光洙ー韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』中公新書 www.chuko.co.jp ●持田叙子編『安岡章太郎短篇集』岩波文庫 www.iwanami.co.jp ●川崎賢子編『左川ちか詩集』岩波文庫 www.iwanami.co.jp ●草間小鳥子『源流のある町』七月堂 www.shichigatsudo.co.jp ●現代詩文庫15『富岡多恵子詩集』思潮社 iss.ndl.go.jp ●アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳『インド夜想曲』白水社 www.hakusuisha.co.j…
名著への招待 第32回(11月号) リチャード・ブローティガン「芝生の復讐」 聞いたことのない作者とタイトル。 英語ランキング
10月の読書メーター読んだ本の数:13読んだページ数:2586こぶたのむぎわらぼうし (はじめてよむどうわ)の感想七匹がおそろいの麦わら帽子にそれぞれの目印をつけるが、末っ子はなかなか決まらなくて……。こぶたのみつけためじるしがいいなあ、と思うのは、出会うまでの物語全部が好きだから。このめじるしのなかに、それまでの物語がみんな入っているからなのだ。自分だけが知っているうれしい物語が、帽子の上で揺れている。読了日:10月30日 著者:森山 京幽霊塔の感想不思議な文章の香気に、あてられてしまったかもしれない。物語の最後は大団円か? いいや、そんなことはどうでもいい。ほら、迷路のゴールに辿り着いた時…
アメリカの鱒釣り (1975年) 作者:リチャード・ブローティガン Amazon 短い断章から断章が続く不思議な本。それぞれに別個のタイトルがついていて、共通するテーマが「アメリカの鱒釣り」なのだ。アメリカの鱒釣り、って、ときどきは釣りそのものを指すけれど、ほとんどは人物(主に作者自身)をさす。どの断章でも、本当に釣りをする場面はほとんど出てこない。(釣りの背景については、よく出てくる) 全体的な印象はシュールで、思いがけない場面でもっと思いがけない場面や思いがけない言葉に出会う。小説(短編集)というよりも、詩集を読んでいるようでもある。 一章が極めて短いから、ぽつぽつ読んでいくのが楽しかった…
オスロ大学の卒論? The Language of Abortion and Stigma in American Literature Before and After Roe v. WadeAuthor: Julia Ryniec Supervisor: Rebecca Scherr, Associate Professor A Thesis presented to the Faculty of Humanities, Department of Literature, Area Studies and European Languages, University of Oslo, Ma…
なんか家人がX(旧ツイッター)での投稿について話してくれて文学系のサークルに入ったら他のメンバーがまったく海外文学の話題を取り上げないのであなたの好きな海外文学作品を挙げて下さいみたいなツイートをした方を見つけたということだった。ここまで読み返してみると何を言ってるのか我ながらよくわからない。でもまあいいか。それでそれに応える形でいろんな作家や作品名が挙がってるということで家人にそれを読み上げてもらった。それを聞きながら随分楽しい十数分を過ごした。ドストエフスキーとかヴァージニア・ウルフとかに混じって家人が読み上げてくれたのは。いちばんびっくりしたのがスティーヴン・ミルハウザーの「エドウィン・…
9月の読書メーター読んだ本の数:10読んだページ数:1473ある犬の飼い主の一日 (新潮クレスト・ブックス)の感想当たり前の一日は、何かが起きそうな(実際起きても起きなくても)小さなディテールのつみかさねで出来ている。当たり前の一日は、いつのことでもあり得るような出来事と、その日だからこその特別な出来事とで出来ている。続いていく一日一日の当たり前が、静かに色づき、脈を打って生きている。読了日:09月26日 著者:サンダー・コラールトごきげんなすてご (BOOKS FOR CHILDREN)の感想上の子が、赤ちゃんを受け入れるために、有形にしても無形にしても、何か、その子なりに納得できる儀式があ…
チャイナタウンからの葉書―リチャード・ブローティガン詩集 作者:ブローティガン,リチャード サンリオ Amazon ブローティガンの七冊の詩集から訳者池澤夏樹さんのチョイスで六十余編の詩が選ばれた。訳者は、一切の「注」をあえてつけなかったという。だから、(一編一編を繰り返し読みながら、これはいったいどういう状況で何について歌ったのだろうと何度か思ったけれど)わからないことはわからないままに、心のまま自由に楽しむことにした。 詩人のなかには、一人の無邪気な子どもがいて、その子はいつでも何かに憧れているのに引っ込み思案で、寂しがり屋で傷つきやすい心を持っているようだ。空の星に憧れて、長い棒を振り回…