バリ島の森に暮らす魔女。「悪」の成分・象徴。聖獣;「バロン」に退治される。「チャロナラン」劇で派手々々しい面&出で立ちで現れる。
土着の神へ習合したものなのか、初めからヒンドゥー系を取り入れたのか、ともかく「ドゥルーガ」や「カーリー」といった破壊系の悪い女神と結びつけて考えられている。
エルランガ王の治世に「チャロナラン」という寡婦が居り、非常に美しい娘を産み育てたが、あれこれ尽くしてみたものの誰とも結婚できず、不遇を恨んだチャロナランがブラックマジックで疫病を流行らす。人々が次々倒れ、世界は死臭に満ち、もはや壊滅的かと思われたとき、一人の高僧の知恵によってこれが回避されるのだが……
――という暗黒劇の主人公が「魔女ランダ」なのだ。
「魔女ランダ」とは、ブラックマジックを学び究めて、復讐に燃えている時のチャロナランの暗黒モードのことをいうが、日本の鬼がそうであるように、ある領域を超えたらもはや取り返しのつかない別人格となるのであり、トラウマやPTSDが厳密には消去不能なように、またRAMに載ったデータも完全には抹消不可能なように、あるいは白血病や糖尿や肝炎が「感懐」で症状がかなり減少することはあっても決して完治こそしないように、いったん別人格に到ってしまった存在はもはや“別人”なのだ。
それが芸術やスポーツや認識の“達成”でそうなのならいいのだが、相手を傷つけることによっても空いた座を奪えるような、このような競争社会にあっては卑劣な手を使ってでも「勝てば官軍」で正当化されていくし、汚い根回しや非合法を連帯させての暴力だので伸し上がった方が手軽で確実なため、弱い精神は邪道でどんどん武装してしまう。
それをこの「魔女ランダ」やヒンドゥーのシヴァ神やドゥルーガ=カーリー〈といっても假屋崎省吾ではない!〉などは、うまく説明しているように思う。