福澤諭吉の言葉には、西哲の理に通ずるものが多少ある。 たとえばコレなどどうだろう。 増税案の是非をめぐって起こした――むろん『時事新報』上に――記事の一節である。 本来人民の私情より云へば一厘銭の租税も苦痛の種にして、全く無税こそ喜ぶ所ならんなれども、其苦痛は実際に到底免かれしむることを得ずとあれば、寧ろ一時に之を取て苦痛も亦一時に止まらしむるこそ肝要なれ。喩へば棒を以て臀辺を一撃さるゝと、又は細鞭にして絶えず叩かるゝか若しくは靴の底に釘して歩ごとに足を刺さるゝと、孰れが苦しきやと云へば、臀辺の一撃大なりと雖も、其痛みは一時にして之を忍ぶに容易なるが如し。 私の眼にはこの論説が、ほとんど『君主…