エヴァ・ヴィティヤ監督『パトリシア・ハイスミスに恋して』を観た。 25年以上も前に亡くなった作家の評伝が、ドキュメンタリーとして成立するのかと思いきや、意外に映像資料が豊富に残されていたことに驚いた。そして未発表(近年、書籍化された)の日記の記述の朗読と、3人の“恋人”たちや親類たちによる回想インタビューを織り交ぜながら、展開してゆく。 パトリシア・ハイスミス(1921~1995)が同性愛者であることは『キャロル』(1952)の翻訳出版と映画化が公開されたことで日本でも有名になったが、その家庭環境と母親との複雑な関係については全然知らなかったので、親類たちが語る証言は新鮮だった。若い頃のハイス…