こと諜報の分野にかけて、英帝国は玄人である。 何故こんな事を知っているのか、何処からソレを掴んだか――。 いっそ魔術的とすら謳いたくなる暗中飛躍は舌を巻くより他なくて。――日本の古い仏教系新聞に、あの連中の底知れなさを仄めかす記事が載っている。 「岩倉公が先年英国に赴かれし時、同国女帝が日本の経典を好まるゝ由を聞かれ、帰朝の後一切経を送られしかば、彼の国よりも種々の珍書を同公に送られしが、今度又同国より、我邦古伝の貝多羅梵莢を写し贈りてよと請ひ来りしかど、南都法隆寺より献ぜし物は正倉院の勅封中にて間に合はず、其他は何れにあるか詳かならねば、右大臣より西京妙法院住職村田教正に依頼され、心当りの寺…