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ティルトローター

(一般)
てぃるとろーたー

[英] Tilt rotor
ティルトローターとは、航空機用語で、ヘリコプターの垂直飛行特性と飛行機の長距離高速特性の両方を兼ねそなえた方式のこと。
一般に、主翼の両端にローター付きのエンジンポッドを取り付け、その付け根部分を回転させてローターを上方あるいは前方に向ける仕組みを採る。

経緯

米ベル・ヘリコプター社は50年以上前からティルトローターの研究開発を進めてきた。
最初の実験機XV-3は1955年8月11日に初飛行したが、このプロジェクトはベル社のみならず、米国防省やNASAも参加して費用の一部を負担しながら、ほぼ20年にわたって続けられた。
その結果を踏まえて次世代の実験機XV-15が試作され、1977年5月3日に初飛行した。
2年後には2号機も飛び、以後10年ほど試験飛行が続いた。その開発実験からV-22オスプレイが誕生し、原型1号機は1989年3月19日に初飛行した。
1994年にはV-22オスプレイに民間型式証明を交付し、実験運航を開始する。

民間機構想

ベル社とボーイング社からは共同で、V-22オスプレイを基本とする民間型CTR-22の開発計画を示している。V-22の動力系統や機体構造をほとんどそのまま利用し、胴体後部のランプドアをなくし、旅客機としての内装や乗降ドア、窓などを取りつける。ただし、エンジンの片方が止まったときのホバリング能力を高めるためにトランスミッションの出力を強化してCTR-22Bとする。客席は31席で、手洗い、ギャレー、手荷物室がつく。航続距離は1,100km。
このCTR-22Bの胴体を延ばして、旅客39人乗りとするのがCTR-22C。さらに胴体を大きくして、客席配置を左右3列から4列に増やし、エンジン出力を15%ほど上げるのが52人乗りのCTR-22D。その一方で、V-22を基本としない75人乗りのCTR-7500といった新しい構想も生まれた。
シコルスキー社は、ローター直径を変更できるティルトローターを発案した。離陸時は直径の大きなローターを立てて、ヘリコプターのように飛び上がり、遷移飛行に入るとローターを前方へ倒しながらブレードを少しずつ短縮し、3分の2以下の直径で巡航飛行に移るというもの。
これにより垂直飛行時は大直径のローター能力を発揮すると共に、巡航中はローター直径を小さくして普通の飛行機と同じように高速で回転するプロペラとなり、飛行速度も増加する。これでペイロードが増し、航続距離も伸びて、経済性も向上するというのが、シコルスキー社の主張であった。
ちなみに、ティルトローター機はオスプレイも含めて、離着陸時の揚力をローターが担うため、主翼スパンが短くてすみ、それだけでも速度性能が良くなる。
一方ヨーロッパからも「ユーロファー」と呼ぶティルトローターが提案された。フランス・アエロスパシアル社、ドイツMBB社、英ウェストランド社の共同提案になるもので、このうち仏・独の2社はその後まもなく合併してユーロコプター社となる。
ユーロファー(Eurofar)とは European Future Advanced Rotorcraft の略。旅客30人乗り、巡航速度620?/h、航続1,100kmの設計仕様で、エンジンは主翼両端に固定したままとし、ローターマストだけが変向する。これにより、エンジンは常に水平姿勢を保つことができるため、既存のものであっても大きな改造は必要としない。それだけエンジン選択の幅が広がるという特徴をもつ。
こうしたユーロファーは20世紀末までに初飛行し、試験飛行を重ねて、2004年から量産機の製造に着手、2009年までに民間機としての型式証明を取得する。将来に向かっては、50席、75席などの大型ユーロファー構想もあった。 
しかしながら、いずれも経済性の面から実用化されることはなかった。
しかし、最近になって、イタリアで新しいティルトローターが開発されている。試験飛行が進むアグスタウェストランドAW609だが、2016年には乗客9人乗りの民間機として型式証明を取り、実用段階に入ることをめざしている。

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