Jack Vance。本名 John Holbrook Vance。1916年カリフォルニア生まれ。SF作家。
カリフォルニア大学バークレー校で、鉱山工学、物理学を専攻後、ジャーナリズムに転ずる。卒業後、外国航路の船員を経て、40年代から小説を雑誌に投稿し始める。後に「終末期の赤い地球」(The Dying Earth, 1950)として短編集にまとめられる作品群で注目され、以降、職業作家として約60編の小説を執筆する。その作品は一般にSFと分類されるが、「終末期の赤い地球」をはじめファンタジー小説に分類すべき作品も多い。またミステリーの著作もある。
「異境作家」の異名をとるジャック・ヴァンスのSF作品は、エキゾチックな固有名詞、鮮やかな色彩の感覚、ファッションに対する詳細な描写、奇妙な風俗習慣の設定など、きわめて魅力的な異世界の描写に支えられている。アーシュラ・K・ル=グィンやジョン・ヴァーリィに類似していると言えるが、これらの作家の描く異境は主として風俗習慣の点に限られていることが多く、またファンタジー分野の他の小説家と比しても、特に色彩感覚の点でヴァンスの右に出るものはいない。
ヴァンスの作品はさほど難解ではなく、ストーリーもエンターテインメント性が高く、ル=グィンやヴァーリィの作品と比べて明快な問題意識が明らかでないため、単なる架空観光ガイドと考えられがちではある。
しかし彼の作品の根底には常に不屈の怒れる男たちが存在し、あたかもピカレスクロマンの趣きを呈している。特に魔王子シリーズでは、主人公の孤高な不屈ぶりもさることながら、敵役となる5人の悪役〈魔王子〉の屈託が非常に魅力的である。ある種のハードボイルド小説と同様の、個人主義を描いた作品でもあると考えるべきである。
また、彼の作品には常に奇妙なユーモアもある。抑えていて、奇妙で、分かりにくく、一読してこれはユーモアなのか、と首をひねることもしばしばである。些細ではあるが、この点もヴァンスの作品を殺伐さから救いつつ「大人のSF」として成り立たせている理由の一つである。
現在国内では、すべての長編が絶版で入手困難である。海外SF作家としてはもっとも再販が望まれている作家の一人である。
魔王子シリーズ(Demon Prince Series)(ハヤカワSF文庫)
冒険の惑星シリーズ(Tschai Series/Planet of Adventure)(創元SF文庫)
その他
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