シンセミア〈1〉 (朝日文庫)作者:阿部 和重朝日新聞社Amazon 1999年に連載が始まり、4年をかけて完成されたという長編小説。悪というか、人間の愚かなふるまいを書き尽くした小説という印象を持った。そして、読みだしたらやめられない。怖いのに、というか、その恐怖の魅力のようなものに取りつかれてしまう。舞台は山形県東根市神町という阿部和重が生まれた実在の町。殺人、自殺、盗撮、不倫、未成年との淫行、麻薬、脅迫、リンチ、放火…。登場人物は50人を超えるが、「まともな奴」は一人としていないといっていい。 戦後、GHQのパン食推進の政策に乗り成長した神町の一軒のパン屋の歴史から始まる物語は、2000…