アメリカのTVドラマ/映画『スタートレック』シリーズに登場する異星人、クリンゴン人が話す言語。
クリンゴン語は、映画『スタートレック3 −ミスター・スポックを探せ!−』("STAR TREK III: THE SEARCH FOR SPOCK", 1984)製作時に、本職の言語学者マーク・オクランドがパラマウントより依頼され、単語や文法などが細部まで設定された。
映画『スタートレック』("STAR TREK: THE MOTION PICTURE")でもわずかながらクリンゴン語が登場しているが、これはスコッティ(チャーリー)役のジェームズ・ドゥーアンがドイツ語などの発音を取り入れて創作したもので、深い語学的設定はなかった。 オクランド博士がこれをベースにして、その発音と語順を守りつつ、設定を拡充したものが『スタートレック3』で使われたクリンゴン語である。
英語はもちろん、地球上の主な言語に似ないように工夫されていて、人工言語としての完成度も高く(方言やスラングも存在する)、世界中に学習者が生まれている。 もちろん、クリンゴン人、クリンゴン文化の独自性や、名誉を重んじるキャラクター性、格好良さの魅力あっての人気だが、クリンゴン語学習者の中には、『スタートレック』をほとんど見たことがないという人もいる。
アメリカの The Klingon Language Institute(クリンゴン語学会)では多くの会員を持ち、またオクランド博士はこの会を通して新出単語を発表している。
2004年2月には、クリンゴン語は ISOコードに "tlh" として登録されている。(Klingon を クリンゴン語で tlhIngan と表記する。その頭文字)
また、Googleクリンゴン語版 もある。
近年ではアメリカのTVドラマ『チャック』や『ビッグバン★セオリー』、イギリス映画『宇宙人ポール』などで、登場人物がオタクであることを表す記号としてクリンゴン語を使用する場面が見られる。
(いくつかは、現在入手困難)
ただし、単語のひとつひとつが一人の人間によって考えられているために、まだまだ語彙は少なく、なかなか増えない。 またクリンゴンの文化や生態系、主に23〜24世紀の技術レベルを基準に作られているため、現代地球人が日常的に使う「会社」、「役所」、「アプリ」、「ハードディスク」、「ブレーキ」、「マイク」、「犬」、「水槽」、「優しい」などといった語彙もまだなければ、スタートレックやSFで頻出する「アンドロイド」、「ワームホール」、「チップ」などの用語もまだ補填されていないため、クリンゴン語だけで会話を行う事は、かなり難しい状態となっている。
スタートレック用語でも、「ボーグ」、「アルファ宇宙域」をクリンゴン語でどう表現するのか、未だ設定されていないのが現状である。
また残念な事に、TVシリーズのTNG、DS9、ヴォイジャー、エンタープライズ、及び映画7作目以降に登場するクリンゴン語では、せっかくのオクランド博士の設定は時々しか使われず、脚本家がテキトーにアルファベットを並べたものや、発音がテキトーな英語読みであることが多く(俳優もスタッフも発音を知らないため)、これらはクリンゴン語学習者からは揶揄して「パラマウント語」と呼ばれている。