僕は車が好きだ。 僕が少年時代、幼稚園から小学校の高学年になるころあたりまで、日曜日は家族で自家用車(当時はわざわざそう呼んでいた)にのって日本橋のデパートに行くのが毎週の恒例だった。僕は決まって紺のブレザーに紺の半ズボン、そして白いハイソックスに革靴はいていた。その姿が恥ずかしい、と僕が気づく年頃まで、我が家は毎週その恒例行事を続けていた。 デパートは、買い物だけで無く1960年代の日本の家族の行楽のひとつのような存在だったような気がする。デパートに行く。子供心にもその響きは実によかった。父はデパートのことを一人で「百貨店」、あるいは”Department Store“とフルネームで呼んでい…