キリスト教の宗派のひとつ。Jehovah's Witnesses。
1870年にアメリカで、チャールズ・テイズ・ラッセルらが聖書研究会を結成、1931年以降、正式名称として「エホバの証人」が採用されている。信者数は日本で22万人、全世界で約750万人。「ものみの塔」や「目ざめよ!」という聖書に関連した小冊子を無料で配布している*1。カトリック教会とプロテスタント教会は、ニカイア・コンスタンティノポリス信条を受け入れないキリスト教をカルト(異端)とみなし、エホバの証人もこれに当てはまるとされている。
唯一神であるエホバ神「יהוה」を崇拝し、伝統的なキリスト教が教える三位一体説を否認しているのが特徴。
エホバの証人は、霊感のもとに記された原文の忠実な反映を命題に翻訳した新世界訳聖書を指針として、1世紀のクリスチャンにならった生活を行うことを目標にしている。
1931年にオハイオ州コロンバスで開かれた大会で、これまでの聖書研究者としての名称を正式にエホバの証人*2に変更する採択が行われた。
週に2回王国会館で行われる集会への参加する。エホバの証人全員が宣教活動に携わる。また、年に1回の地区大会、年に2回の巡回大会が行われる。唯一の式典として、年に1回、キリストの死の記念(主の記念式)が行われる。
彼らは「新世界訳聖書」という独自に翻訳した聖書を用いている。「恣意的な翻訳だ」「自分たちに都合の良い内容に改竄している」という批判もある。
一方、彼らの主張は、 「現在合衆国で使われている英語版聖書は、ヘブライ語・ギリシャ語・ラテン語などの重訳を経たものである。しかし、翻訳の際には、誤訳やニュアンスの変化が不可避的に伴うもので、重訳は望ましくない。そこで、諸資料を勘案し、最も適切と思われる英語版聖書を作成した」というものである。ただし、日本を始め各国に支部があり、そこでは新世界訳聖書を日本語他の言語に重訳して使用している。
基本的には聖書の記述を最重視する立場にあり、クリスマスの否定、三位一体説の否定の他、進化論の否定、輸血の拒否などの特徴的な主張も、彼らの聖書解釈に由来している。
機関誌・書籍などで、しばしば古今の有名人の発言・著作を引用するが、前後の文脈を無視して極めて恣意的な引用をする傾向にある。(例えば、有名な古生物学者であるスティーブン・J・グールドの著作を、あたかも彼が進化論を否定しているかのような形で引用する)
参考:エホバの証人の本に見られる「不完全な引用」
近年では全人類の平等を謳っているが、同協会に批判的な主張によれば、ローマカトリックを始め、他のキリスト教諸派よりもずっと後(1970年代)まで「黒人は神に呪われた種族であり、知的にも劣っており、終わりの日に遂に彼らが救済される時、彼らの肌は白くなるだろう」と主張してきたという。*3
世界各国に支部があり、信者のうち白人は1/3程度と推測される。「統治体」と呼ばれる最高指導部は、設立以来多年にわたり白人男性のみで構成されてきたが、1999年にメンバーにサミュエル・F・ハードが加わったことにより、統治体にも有色人種が加わることとなった。
1933年、ドイツで政権を握ったナチスがエホバの証人の弾圧を始めると、協会のドイツ支部は大会を開催して(ベルリン大会)、ナチスの政策を支持し、自分たちとユダヤ人は無関係だと主張する「事実に関する宣言」を全会一致で採択した。この大会には、当時の最高指導者ラザフォードも出席している。しかし、世界各国に支部があり、本部がアメリカにあるエホバの証人は、この「宣言」以後もナチスの弾圧の対象となり続けた。なお、協会自身は、自分たちが終始ナチスに批判的であったと主張している。
エホバの証人の信者である高専生が宗教上の理由で剣道実技を許否した結果、退学処分を受けたが、1996年3月、最高裁判所は、この退学処分は違法とした判決を下した*4
エホバの証人信者に対して、輸血の方針に関する説明をしないまま手術を行い、輸血を行った医師に、2000年2月、最高裁判所は患者の人格権を侵害したと判決した*5。
1985年、ダンプカーに轢かれたエホバの証人の子供大ちゃんが、両親の輸血拒否にあい、死亡。輸血をしても助からなかったとの見解もあるが、マスコミに大々的に取り上げられた。大泉実成著「説得―エホバの証人と輸血拒否事件」に事件の様子が描かれている。
1994年、過剰な体罰、虐待によりエホバの証人の信者の子供が死亡した*6。
ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録
エホバの証人 カルトかクリスチャンか? 歴史と聖書による分析
*1:現在ではwww.jw.orgから150以上の言語で出版物をダウンロードできるようになっており、ウェブ限定のコンテンツも掲載されている。
*2:イザヤ43章10節
*3:下部の参考リンク「エホバの証人情報センター」の記述による。同センターは論証的な立場に立っているが、エホバの証人に対する論調は全般に批判的。1970年代およびそれ以前の、エホバの証人における有色人種の扱いについて、より信頼性の高い情報源があればご教示ください。
*4:http://www.hiraoka.rose.ne.jp/C/960308S2.htm
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