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アフラトキシン

(サイエンス)
あふらときしん

天然発ガン物質、カビ毒の一種
アフラトキシンは、天然のカビ毒素(マイコトキシン)で、生産菌はおもに熱帯および亜熱帯地域に生息するアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus、)又は、アスペルギルス・パラジチカス(Aspergillus parasiticus) という麹菌の特定菌株であることからアスペルギルス・フラバスの産生した毒(トキシン)ということでアフラトキシンと命名された。一般的に、微生物の2次代謝生産物の産生は基質となる食品や飼料の成分組成、水分、温度等諸条件の組み合わせに左右される。又、人工培地における継代数が重なるにつれてカビ毒産生能は低下する。アフラトキシン生産菌は炭水化物に富むトウモロコシ、ナッツ類、香辛料、綿実など多種類の農産物に感染して増殖し、アフラトキシンを生産する。特に、作物が日照り、高温多湿、病害虫による被害などのストレスに会うとこの菌が感染し易くなる。
1960年、英国でブラジル産の落花生粕を餌として与えられた10万匹の七面鳥が死ぬ事件が発生した。餌に含まれていたアフラトキシンが原因であったことが発見の端緒となった。アフラトキシン類16種類の内、B1、B2, G1,G2の4種と代謝物としてのM1、M2の計6種が食品や餌中の汚染物質として重要である。なかでもアフラトキシンB1の毒性はダイオキシンの10倍以上といわれ、また天然物で地上最強の発癌物質でもある。 人工の化学物質と誤解されがちだで、農薬と十把一絡げに規制されているので農薬の一種と思っている人もいる。アフラトキシンは、それを摂取した家畜の肝臓に深刻なダメージを与えるために、ミルクや卵の生産量が減り、餌の消費量も低下する。ロンドン病院での動物実験の結果によると、ラットにアフラトキシンB1含有ナッツを食べさせたところ、88〜100μg/kgで容量依存的に肝臓ガンの発生が認められた。 日本では10ppb、米国20ppb*1, 途上国などの国際規制値:30ppbと地域により異なることも知る必要がある。
このアフラトキシンの人に対する急性毒性は、サリンの約80分の1と言われ、例としては、1974年にインドで肝炎のために106名という多くの人が死亡した事件やケニヤでの急性中毒事件などがある。慢性中毒については、タイ、フィリピン、南アフリカ、ケニヤなどで、肝ガン発生率とアフラトキシン摂取量との間に関連性があるとの疫学調査の結果が報告されている。このようにWHOの報告書にまとめられているが、日常食を介して1日3〜4μg以上のアフラトキシンB1を摂取し続けている地域住民の肝臓癌発生率について有意な増加が示唆されている。
アフラトキシンに汚染された餌を食べた家畜のミルク、卵、肉なども汚染される恐れがあるのは否めない。

アフラトキシン生産菌のアフラトキシン産生至適温度は25℃前後、生育に要する最低Aw*2は多少基質によって異なるが0.75〜0.80(常用水分として15〜16%)である。農産物の収穫後処理−貯蔵−流通−保管−消費の過程においては、温度管理はともかく、水分管理に関しては条件は複雑である。即ち、アフラトキシン生産菌の土壌中分布が普遍的な地域においては、収穫物への生産菌自然汚染を完全に防止する事は出来ない。従って、生産菌汚染を常態と考えてアフラトキシン自然汚染防止には、生産菌の増殖防止のための収穫後乾燥処理の適否が問題となる。しかしながら、例え適切な処理によって収穫物全体としてのAwを低下させる事が出来た場合であっても、その後の貯蔵や流通過程中における生産菌増殖並びにアフラトキシン産生阻止を保証する事にはならない。なぜならば、収穫物全体に分散して存在している生産菌の菌糸断片や胞子は、その周囲に偶然飛散した水滴あるいは燻蒸処理によって死んだ虫体の水分を利用して増殖し、アフラトキシンを産生する事が知られている。即ち、アフラトキシンのみならずカビ毒一般に、その汚染はしばしば均一汚染というよりは極所点状型を示し、落花生、ピスタチオ、トウモロコシのような大粒・中粒農産物にあっては粒別汚染型である。この事がカビ毒試験並びにカビ毒管理を困難にしている原因の一つである。しかも、一般にトン単位で流通する固体農産物の微生物制御には、今後なお多くの課題が残されているといえよう。
アフラトキシン類の発ガンのメカニズムとしてはDNAや染色体に直接作用し、細胞変異修復タンパク質であるp53の遺伝子を変異させたり、細胞増殖のコントロールをするRASタンパク質の遺伝子を変異させたりすることが知られている。フォスフィンという農薬を高濃度に与えるとアフラトキシンの生成を抑えるという報告もある。特に最近、これらカビ毒の与える食品リスクが再び問題となり世界各国で食品や農産物におけるこれら発ガン毒素の含有量調査や危険性に関する研究が2000年度においても活発に行われていることは消費者や食品メーカーは十分に知っておく必要がある。
現在、アフラトキシンが示す強力な経口発癌性やの耐熱性(アフラトキシンB1の融点は268〜269℃)並びに適切な化学的あるいは物理的処理が適用困難な事等から、世界各国で放射線照射処理によるアフラトキシン生産菌殺滅及びアフラトキシン分解無毒化に関する基礎研究が行なわれている。
ダイオキシンと比較したときのアフラトキシンの毒性の高さから考えると現在のダイオキシン並の規制値(10ppb)では全く不十分でその10分の1以下の1ppb以下にアフラトキシンの規制値を設定する必要があろう。そうすると、現在の食材の多数が不合格となるリスクを受けてしまう。

*1:米国FDAは、食品や飼料中のアフラトキシンの許容レベルを20ppb、ミルク中のM1の許容レベルを0.5ppbとしている。 FAOによると、世界の食用作物の25%がカビ毒の影響を受けており、その中でもアフラトキシンによるものが最も深刻である。

*2:微生物の増殖に必要な水分量を水分活性

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